旅行記
2018/04 平ヶ岳
平ヶ岳は、群馬県・新潟県の県境(上越国境)にある、2141mの山である。
100名山選定。
無雪期に登山道をコースタイム13時間日帰りするのが一般的だが、
登山口までのアクセスが不便なため、近場の100名山としてはずっと未踏だった。
GWシーズンには、尾瀬から上越国境を通って、平ヶ岳に行くことができる。
この場合、尾瀬の鳩待峠から1泊2日か2泊3日で十分行ける。
鳩待峠から往復で、CT15〜17時間(推定)、距離30kmだ。
この距離に加え、完全バリエーションルートのため、
道迷い、スノーブリッジの崩落、クマとの遭遇など、難易度が非常に高い。
それでも、積雪期の上越国境の雄大な景色に心打たれ、通うベテランも多いとか。
で、3年前から機会をうかがっていたのだが、天候・休日・積雪量の都合などから、
なかなか実現する機会がなかったが、ついに実行できそうな状況だったので、
さっそく、万全な覚悟で挑んだものだ。
今日明日と、高気圧に覆われ、快晴は確実の模様である。
視界がなければ難易度が激増するため、晴れは必須条件だ。
ちなみにこれで100名山は94座になった。
近場にばかり行っているのでなかなか座数が増えない。
1日目
沼田駅から関越交通バスで戸倉まで。
戸倉からは、シャトルバスに乗り換える。
GWより1週早いということもあり閑散としている。
シャトルバスに乗って鳩待峠へ。
例年よりかなり積雪が少なく、ここ10年で2番目に少ないらしい。
あまり雪が少ないと、平ヶ岳へのルートは、スノーブリッジが崩落していたり、
藪が出ていたりと難易度が激増する。
積雪量は要注意だ。
徒歩1時間で山ノ鼻。
とはいえ、例年のGW終盤くらいの積雪量はありそうだ。
まだこの時間ではテントも少なく、閑散としている。
山ノ鼻からは、いよいよ平ヶ岳へのバリエーションルートへ。
猫又川の右岸をひらすらさかのぼっていく。
期待していなかったトレースはわずかにあり。
トレースはあっても正しいか確認が必要だし、あってもなくても同じだ。
雪が腐っていて歩きにくい。スノーシューがあるとよさそうだ。
ワカンではどうだろうか。
ムジナ沢のスノーブリッジが割れていて、GWの通過は厳しそう。
途中、高巻くところが2個所あり、スリップすると川にドボンのため、
慎重に通過する必要あり。
で、猫又川が標高1440mで左俣と右俣に分かれるが、
この分かれたところで左俣・右俣の中央の尾根に乗ると、
登り返しがなく、ジャンクションピークまで行ける。
ところが、雪が少なくスノーブリッジが崩落していて、
この標高1440m地点で猫又川を渡れない。
そこでそのまま左俣の右岸をさかのぼり、1460mで沢が分岐するところで渡れたので、
そこから左の沢に入り、1470m付近で尾根にとりつく。
この尾根はブナ林のため、見晴らしがよく、このルートもよく使われている。
しかし、スズヶ峰へ登る必要があり、登り返しがあるのが難点。
登ると展望が開けてくる。
スズヶ峰付近。
いい展望だ。上越国境の魅力の1つだな。
ジャンクションピークには、テントが設営されている。
テントの上に見えるのが平ヶ岳。遠い。直線距離で7kmある。
ジャンクションピーク設営するのが一般的で、この日は3張りあった。
しかし、まだ14時なので時間がもったいない。
このため、テント装備を持って進軍することにする。
ジャンクションピークから1時間ほどの場所から、ジャンクションピークを振り返る。
平ヶ岳が近づいてきた。
しかし遠い。
雪庇やグライドクラックがあり要注意。
いつのまにか雪庇の上にトレースがついている。
で、平ヶ岳の頂上。
頂上には、積雪観測機器があるのみで寂しい。
GPSで確認するとやはりここが頂上のようだ。
頂上から北東に200m離れた場所には三角点と山頂標識がある。
360度ひたすら大平原だ。
これだ。
三角点は埋まっているが、案内板には一応「平ヶ岳」と書いてあるのでタッチ。
誰もいないので写真をセルフで撮る。
頂上は広く、風をよけられる場所はなさそうだ。
で、案内板が風をよけられる絶好の配置だったので案内板の影に設営。
スコップを持ってこなかったため、足で頑張って整地&少し掘り下げる。
食事は、100m離れた場所で行う。
食料もここにデポしておく。
そうでないと、夜中にクマがテントに押しかけてくることになる。
クマ地帯でのテント泊の常識だ。
しかし、飲料水が足りなかった。2Lではこの時期では不足する。
なお、ハイマツの近くは踏み抜きするので近寄らないこと。
日が傾いてきた。
最果ての雰囲気だ。
すっかり暗くなった。
まわりには人家の明かりなどは全く見えない。360度山しか見えない。
恐ろしい秘境だ。
食料を別の場所にデポしてあるのと、ザックをマットの下に敷いているため、
テント内はかなりすっきりしている。
クマ対策には、ヘッドライトをランタンのようにつるして照明にしている。
明るいテントには奴らも近づいてこないだろう。
もっとも、森林限界付近には来ないと思うが・・・。
いよいよ暗くなってきた。
半径7kmに人間は僕しかいない。
何かあったらトラブルは自分で解決しないといけない。
この状況で足を怪我したら死ぬな。
しかし、携帯の電波は何とかギリギリ通じる。心強い。
では寝る。
2日目
19時半就寝、朝4時半起床。
睡眠時間は十分だが、なかなか寝付けなかった。
なお、気温は0℃程度だったようで、
寝るときには、モンベル0#では暑く、寝袋には入らないで寝た。
やっと日が昇ってきた。長い夜だった。
こんな奥地に泊るなんてなかなかいい経験だ。
撤収するころにはすっかり日が高くなっていた。
頂上を経由して再び尾瀬に戻る。
平ヶ岳を振り返る。
尾瀬に向かって進む。
新しいクマの足跡がある。人間よりクマのほうが多い。
やっとジャンクションピークまで戻ってきた。
ここには昨日の夜は3張り設営されていたようだ。
ここに設営し、夕方あるいは翌日に平ヶ岳をピストンするのが普通だ。
まとまって設営していれば、クマも寄ってこない。
尾瀬に向かう。
正面には山ノ鼻が見える。
下る。
途中、1800m付近で尾瀬と外界を区切る尾根から降りる。
分岐がわかりにくい。
しかし、昨日の自分のトレースがかすかに残っていたので、
これを追いかけて問題なく下ることができた。
山ノ鼻に戻ってきた。これで一安心。
気温は11度と暖かい。長袖1枚でも行動中は汗だくに。
食堂の営業は9〜15時。カレーを頼む。750円。
山ノ鼻から鳩待峠までは1時間。
結局アイゼンは使わなかった。
シャトルバスを待つ。
しかし、バス停には待合所みたいなものはなく、日陰がないので待つのもつらい。
以前、バスが峠まで乗り入れていたときには、休憩所で待てたのだが。
腹が減ったので沼田駅前でそばを食べる。
で、LINEを確認すると今日は埼玉で鍋(焼き肉)をやるとのこと。
自宅帰還後、荷物を置いて、シャワーだけ浴びて、上り電車に乗り、友人宅へ。
焼き肉食い放題でたんぱく質を補給できていい感じだ。
さて、平ヶ岳までは13時間ほどで往復できることが判明したが、
これは2日間に分けているため、で日帰りで13時間が可能かは不明だ。
しかし、山ノ鼻〜平ヶ岳であれば、11時間半くらいのため、
何とか日帰り許容範囲内だろう(4時出発→16時帰着など)。
だが、クマ出没地帯の猫又川付近をクマ活動時間帯の早朝に歩きたくはない。
やはり、この1泊2日スタイルが一番安全・確実だろう。
1日目 0940→1650(所要7:10 CT不明)
2日目 0540→1120(所要5:40 CT不明)
以上、無事に帰還。総費用15k。