旅行記
2011/07 利島
今回は珍しく東京島嶼シリーズである。
いままで、伊豆大島・新島・神津島・父島・母島に行ったが、
伊豆大島に近い利島には行ったことがなく、
日本唯一のヘリコプター航路に乗りたかったので、早速行ってみた。
とりあえずは前夜23時発の大型客船で利島まで行く。
2等船室なら格安だし、久々に夜行の船旅が楽しめるのでお得だ。
ジェットフォイルは高速で、
狭い東京湾で低速船舶をゴボウ抜きするのも楽しいのだが、
シートベルト着用のため船内をうろうろできない欠点は大きい。
夜の竹芝桟橋は涼しくて快適、夜景も綺麗だ。
ただ、東京湾納涼船から下船した組がうるさいのが難点。
これは東京湾ディナークルーズのビール飲み放題版みたいなもので、
僅か2500円で飲み放題とクルーズが楽しめてなかなか面白そう。
しかも浴衣着用で行くと1000円引きになるとか。
23時にスタートし、夜の東京湾を15ノット程度で進む。
遅いのは、大島まで距離が近く、全速だと4時間程度で到着するため、
わざと7時間掛かるようにしているためである。
とはいえあまり低速航行も迷惑なので、沖合いで停泊しているようだ。
ジェットフォイルの巡航速度は38〜45kt、航続距離は450kmだ。
八丈島までは航路ベースで320kmなので、能力的には可能だが、
所要4時間以上となりちょっとしんどいかなあ、といったところ。
これは博多⇔釜山よりも長距離なわけだし。
父島⇔八丈島は720kmあるため、航続距離が足りずに不可能だ。
とはいえ、増設の燃料タンクを設けるなどすれば理屈上はOKだ。
(ボーイング風に命名するとB929ERとかの名前になりそう)
合計1040kmは、高速のジェットフォイルといえど13時間を要し、
夜行便になってしまうだろうが、あの狭い座席で夜行はしんどいな。
ヘリコプターのS-76Cの場合、航続距離はジェットフォイルより長い630km。
これは30分の予備燃料を確保した場合の航続距離なので、
八丈島までならば余裕で飛べるが、父島⇔八丈島は不可能だ。
しかし八丈島までは常時洋上飛行になるのがちょっと不安だが、
東京愛らんどシャトルでは既に実施済みなので問題なさそう。
片方のエンジンが故障したときには、
満載の場合は水平飛行することができず不時着水となってしまうが、
着水するまでにかなりの飛行距離を稼ぐことができ、
(高度450m程度を飛行するので、10km程度)
一番近い島まで辿り着ける可能性もある。
辿り着けなくても、少しでも島に近い場所に着水すれば救助も容易だ。
あるいは、大型船の近くに着水してもよい。
伊豆諸島付近なら半径10kmに大型船が居る可能性は高そう。
2等船室。
必ず1人分のスペースは確保される。
これは、山小屋と違って船舶には法令による乗船定員が定められており、
これ以上乗せる事はないためである。
電車のように詰め込むと救命胴衣や退避船が足りなくなるため厳禁だ。
なお、貸し毛布は1枚100円で、床に敷く用・掛ける用に2枚あれば十分だな。
2等には座席区画もあるがこちらはかなり人気がないようだ。
しかし船ってなんでこんな階級社会?なんだろうか。
せいぜい飛行機みたく3クラスもあれば十分な気がするが。
あと特等船室などは必ず2人部屋などなのも不便。
出張用途などでは1人の需要もあるはずで、
寝台特急のソロのような小さな1人部屋がほしい。
船橋にも出ることができる。
涼しい夜風を浴びることが出来て快適だ。
既に夜24時近いので羽田からの航空機はほとんどない。
遅い船を追い抜く。
朝、伊豆大島に寄航する。
その後、利島に到着。
利島の山頂は標高500mくらいしかないのに雲がかかっている。
こんな地図があった。
もう雲1つない快晴で朝7時なのに超暑い。
ひとまずこれ以上暑くなるまえに島内を散策する。
こういう風に日陰になってると涼しいな。
天気がよくて暑い。
利島ヘリポートへ。
ヘリポート。
ここでヘリに乗る手続きをする。
手荷物無料は僅か5kgまで。
パソコン・書籍・食料・水を持っていたので、重さ5.5kgになっている。
これだと超過手荷物料金170円を取られてしまうので、
ゴミを捨てたあと、水を飲んでしまい5kg以下にする。
ヘリが到着。
大型ヘリで迫力も抜群だ。
機種はシコルスキーS76C型、エンジン出力715shp×2、12人乗り。
しかし運行管理の面から、乗員1名で済む9人乗りとして運用されている。
実際にはパイロット1名に加えて、副操縦士席には整備士が1名乗務する。
地上での支援や、機体の管理のために乗務しているが、
そんなにシビアな管理が必要なのか?という気もするが、
常時洋上飛行となるため塩分でエンジンに掛かる負担は大きいそうだ。
さっそく搭乗し、スタート。
内部はこんな感じ。
今回は僕だけしか乗っていない。往路は無人だった。
1人だけのために大島⇔利島を往復していることになり、運行コストは25万くらいしそう。
ちゃんと冷房もついている。
ヘリだとパワーと重量の問題から冷房なしなのも多い。
とはいえ、上空に上がれば涼しいので普通は冷房は不要なのだ。
S76はVIP輸送にも使われるのでそれを想定しての装備なのかな。
計器はこんな感じ。
エンジンは2基あるので、それぞれ2つずつ指針がある。
OATは外気温、この場合は27℃だ。
T5は排気温度(℃)。700℃くらいの排気温は普通だ。
N1はコンプレッサータービンの回転数。
N2はパワータービンの回転数。107%だが限界以上使っているわけではない。
TQはトルク。N2×TQ=発生出力となる。
NRはメインローターの回転数、クラッチで接続されているのでN2=NRとなる。
トルクは2基計で131%となって、
仮にエンジンが一基故障すれば出力が足りず、飛行を継続できないことになる。
とはいえ、106ノットで131%であれば50ノットくらいまで減速すれば平気そう。
速度計は155ノットが超過禁止速度となっている。
さすが大型ヘリだな、小型のセスナなどよりも大分速い。
大島空港に着陸アプローチ。
以後、ギアを展開し着陸態勢となり電子機器オフ。
こちらはエンジンのオイル周りの計器(油温と油圧)だ。
エンジン停止中に撮影させてもらったので、当然数値はゼロに近くなる。
MGBは、メインローター・ギア・ボックスの略。
燃料は800lbs(360kg)も積んでいるのでちょっと勿体無い。
大島空港に到着。
エンジンカットを行い、ローターの回転がほぼ停止してからドアを開放し、降機する。
ところで、ヘリで大島⇔東京も面白そうだ。
直線距離で100kmあるので、コストは1人3万円くらいになってしまうが、
東邦航空は1機の予備機を東京へリポートに待機させており、
整備などを行うときには、必ず大島から東京へリポートに回送している。
ということであれば、この回送便を臨時便としてに客を乗せてしまえば、
追加のコストはないからその分は丸儲けだ。
仮に1人2万円とすれば、
アクセスが調布よりも良い東京へリポートなので乗る人も居そうだ。
新中央航空のドルニエ機。
離陸時は滑走路の端までいかず、途中から滑走を始める。
大島空港は1800mの滑走路があるが、ドルニエは400mほどの滑走で離陸する。
大島空港では昼食をとったあと昼寝して4時間ほど時間をつぶす。
新中央航空にチェックインするが、
再び手荷物が5kgを超えたので、再度軽量化する。
しかしヘリといい新中央航空といい、手荷物5kgというのは結構しんどい。
高速船は10kgまで、大型船は20kgまでなので、
サーファーや釣り人や写真家などの人などは、大型船を利用しているようだ。
こちらは冷房なしなので暑い。
ちゃんと各席に新中央ロゴのウチワが用意されているのが親切。
とはいえ、ドルニエの性能を以ってすれば高度8000mまで上がることができ、
その高度では夏でもマイナス30℃にもなるので冷房の必要はまったくない。
(まあその前に酸素がないが)
実用的にも高度1500mくらいだが、それでも地上よりは10℃涼しいのでOKだ。
最近購入した新型機は4枚ブレードが5枚になってよりかっこよくなった。
どんどん飛び、三浦半島の直上を飛ぶ。
高度が低い割りに速度が速いのでめちゃくちゃ地面の流れが速い。
横浜。
東海道新幹線を横切る。残念ながら列車とはすれちがえず。
新幹線と交差しているのは相鉄線(西谷駅)。
JR東海道線、JR東海道新幹線、東名高速、中央道など、
次々と日本の大動脈を横ぎる。
小田急線の百合ヶ丘駅。
読売ランド。
模型のようで面白い。
京王線を横切る。
中央道を横切り、調布空港にアプローチ。その後、着陸態勢。
以上、無事に帰還。
総費用27k。
飛行ルートについて
利島⇒大島については、コントロールとなるポイントがないことから、
滑らかに繋がるように飛んでいる。
大島空港へは直接着陸せず、ちゃんと飛行機と同様の進入ルートを使う。
大島⇒調布については、直線で飛ぼうとすると、米軍厚木飛行場が支障となる。
厚木飛行場は管制圏が6000ft(1800m)と高く、
よって半径9km・高度1800mまでの飛行は許可されない。
そのため、上を飛び越えるか、迂回するしかないのだが、
与圧がないドルニエ機で一気に1800mに上昇すると中耳炎になる可能性もあり、
やはり迂回が妥当であろう(性能上は全く問題なく可能だ)。
しかし迂回するにも、直前で迂回しようとすると、
厚木飛行場から南に向かって延びている着陸進入ルートが邪魔になる。
この進入ルートはF14とかも飛んでいるので非常に危険だ。
というわけで、結構手前から東側に迂回することになる。
西側に迂回すると、今度は米軍横田飛行場への着陸進入ルートが支障になる。
飛行諸元について
いずれも空港周辺は推定値。
利島⇒大島の場合、高度は500mとかなり低いところを飛んでいる。
飛行距離と性能を考えればもう少し上昇しても良い気もするが、
あまり上昇すると高度1000m前後を飛ぶ新中央航空とバッティングするためか。
速度は300km/hくらい出ているが、これは強い追い風のため。
実際の速度は140ノット前後で対気速度は260km/hといったところ。
大島⇒調布の場合、高度は1000〜1200m前後を飛んでいる。
性能的には7000mくらいまでいけるのだが、与圧がないのでこのあたりが妥当。
夏は暑いのでもうちょっと上昇して欲しい気もするが、
一気に上昇下降すると航空中耳炎になる客が出るのでダメだろう。
速度は380km/h前後で妥当な巡航速度だな。
やはりウィンドプロファイラで確認すると追い風になっているので、
実際の対気速度よりはやや速くなっている。