旅行記


2011/06 JR東日本パス

震災復興の一環として観光需要を励起するために、
JR東日本エリアの全線が1日1万円で乗り放題のフリーパスが発売された。
もの自体は毎年1月1日のみ実施されているパスを同じものだ。
乗り放題なうえ、今の時期限定ということで、
東北地方の鉄道施設の震災復興の状況確認に行ってみた。



朝一の新幹線で新青森へ向かう。



土曜の朝の下り便ということ、
またパス使用可能となった初日ということもあり大混雑。
デッキや室内通路まで満員で、なんとか窓際を確保。
「はやて」でこれでは「はやぶさ」はさらに混雑しそうだ。



那須塩原以南では通常の速度まで回復しているらしく、
ダイヤ上では宇都宮⇔那須塩原間のみ「はやぶさ」は300km/h運転。
しかし余裕時間がたっぷりとってあるため、
実際にはそこまで速度を出さないようだ。
「はやて」でも唯一275km/hの区間となるが、
同じく余裕時間が多いため、行きは一瞬だけ270km/h出したのみで、
帰りは255km/hが最高速度であった。



福島駅などの通過は140〜160km/hの低速で行う。
ホームで通過を眺めている人も見えるくらいだ。
このくらいの速度では極めて静粛で接近してきたことにすら気付かないだろうな。
いままでは270km/hの高速通過駅だったのだが。
もちろんこの程度ではトンネルドンは起こらない。
ときおり100km/h程度への減速もある。



東北道と交差する。
自動車よりやや速いくらい。なんとも情けない・・・。



仙台駅。
天気が悪く雲の底が低い。


仙台駅。



仙台⇔盛岡は171.5kmを69分要しており、表定速度は149km/hである。
そのためほとんど全面的に160km/h制限になっているものと思われる。
各駅停車だと85分で121km/hで、これは在来線特急よりやや速い程度だ。
7月9日以降は54分となり191km/hとなる。
おそらく一関以北が通常通りになる一方、一関以南は200km/h制限か。
ちなみにデジタルATCなのでいままでと異なり、
5km/h単位で細かく制限速度を設定できる。
そのため、いったん140km/hまで減速することもあったり、
30・70・110・160・210・240・275等の、段階的な制限速度ではないように思えた。



一番被害甚大だった仙台〜一関間は、震度7の揺れを喰らった区間で、
ところどころで90km/hまで減速するところもある。



ほんとうに「なんとか列車を通しました」という程度の話だ。



新青森へ到着。
途中の八甲田トンネルは延長27kmの陸上トンネルでは日本最長のもの。
27kmもの長大トンネル掘削は相当な苦労があったものと思われるが、
はやては約6分半で通過する。
ちなみに4月の余震のときにこのトンネル内で非常停止して、
結局脱出できずに保線用車両に乗り換えて脱出したそうだ。
さすがに歩くわけにもいかないし。でもこえーだろうな。



青森駅へ移動。
その後はJR北海道のスーパー白鳥函館行きで蟹田へ。



蟹田。



青森の北海道に近い場所ということでなかなか奥地の雰囲気。



とはいえ、登山で秘境まで行っていると人が住んでいる時点で、
それは秘境という定義ではないような気もするな。



ドライブにも良さそうだ。


帰りも新青森から上りはやてに乗る。
E5系が停車していたので人だかりに。
とはいえ、まだまだE5系の高速性が発揮されることにはならない。



しかし窓が小さいのが難点だな。
N700系もそうだが、重いのはわかるのだが窓が小さいのはちょっと・・・。



その点、E2系の2連続窓は広くて開放感があってよい。


盛岡からはこまちに乗り換える。
こまちのほうが若干空席が多いように思えた。
また元々指定席車両だったもののほうがシートピッチが広くお得。



盛岡では10分停車・仙台では5分停車と、かなり余裕時間が確保してある。
突発的な補修工事などで徐行が必要となった場合に安全を確保してあるのか。



青空が綺麗。



大宮駅まで戻ってくる。
往復1300kmは新幹線に乗れて非常に満足。


2日目




また暇だったので乗ってきました。
今度は長らく乗ってない山形新幹線と秋田新幹線に乗ります。



関東は北上してた梅雨前線の影響で天気が悪い。
梅雨の時期は雲の底が低いのが特徴で、
今回は雲底高度600ft(200m)と高層ビルであれば雲の中に突っ込むほど。
このような状況では桶川飛行場も1日中クローズだったようだ。



各駅停車のやまびこで福島まで北上する。
宇都宮のあたりで東北道と交差するところはこちらが圧勝。
しかし、この先で160制限となっているところは、自動車といい勝負になりそう。
震災による徐行に加えて各駅停車ではかなり低速。
これじゃあJR西日本のサンダーバードとかと余り変わらない。
郡山駅では通過する「やまつば」を撮影したがやはり160km/hのようだ。
とはいえ、E4系MAXだと160km/hでもそこそこうるさい。
E2+E3系の「はやこま」ではかなり静かなのだが。



福島からは山形新幹線へ。
福島は市街地にトンネルがあるため、トンネルドンの被害が大きそうだな。
実際、緩衝工が次々に追加されているようだ。



山形新幹線区間は、奥羽本線の在来線区間を通る。
これがくせもので、板谷峠のあたりは急曲線と急勾配が連続し、
大出力にものを言わせる新幹線電車でも、あまり速度は上がらない。
基本的に33‰、最大38‰の勾配となるが、
さすがに新幹線電車だと130km/hでも加速余力はあるようだ。
あまりに遅いため、山形県でも問題になったらしく、
検討の結果、板谷峠をスルーする長大トンネルを掘削すれば、
16分短縮するということになった。



米沢駅。


有名なミスマッチ高層ビル。


山形駅。
2分の停車でスルーする。



新庄駅。



ここから普通列車秋田行きに乗り換えるが、30分ほど時間があるので休憩。



多少天気が悪い。
普段は千歳行きの飛行機で上空から見る区間だが、地上はこんな感じになってるのね。
基本的には田園地帯だ。



大曲駅。



ここから秋田へ。



有名な3線軌区間。
これ、標準軌と狭軌で中心線がズレるのが難点だが、
中心線を合わせるようにすれば、レールは4本必要になり、
かつ分岐機の構造が複雑になる難点はあるものの、
近年話題の脱線防止ガードの代用になるのでどうだろう?
レールが3本だと磨耗が均一にならないなどの不便なところもあるし。



秋田空港に着陸するANA機が見える。
距離は10kmほど離れているが望遠なら十分見える。



秋田駅。



帰りは東京行きこまちにのる。




速度が遅いので、トンネル緩衝工を注意深く観察してみると、
結構短いトンネル(100mくらい?)にも設置してあるものもある。
また10km以上の長大トンネルにもある。
距離が長くなると当然減衰するが、あまりにも短すぎても(20mとか)、
微気圧波の波形が立ち上がる前に出口から拡散してしまうので音はしない。
たしかに白石蔵王駅付近にある延長15mくらいのトンネルには緩衝工はない。
とはいえトンネル長200mくらいだと、
接近してくる新幹線そのものの走行音のほうが煩いので気にならないはず。
しかし、仮に10kmのトンネルなら、
新幹線が来る数分前とかにトンネルドンするので、こちらは対策が必要だ。

ところで、トンネルの南側よりも北側のほうが緩衝工が多い気がした。
これは、山の北斜面よりも南斜面のほうが耕地や宅地が多く、
そのため南斜面でのトンネルドンを防止するために
南行き列車がトンネルに突入するトンネル北側に緩衝工を設置していること、
また北行き列車は先頭にミニ新幹線車両を連結しており、
これが断面積が小さいためトンネルドンが弱く、
南行き列車に対してトンネルドンを有効に防止するため、
北側に優先的に緩衝工を設置しているものと推測される。



仙台駅。



舗装がパッチワーク状になっている。


無事に大宮駅まで到着。
たくさん新幹線にのれて大満足。


総費用13k+12k。


おまけ

上越新幹線の中山トンネルに寄って行く。
先週、上越新幹線に乗ったときに、中山トンネルでの制限160km/hを通過したが、
明らかに曲線が挟まれており、工事の苦労の跡が伺える。
地上から行ったときに何か痕跡が残っていないかと思ったが、
結論から言うとあまり成果はなかった。


トンネルの入口部(新潟より)は、
延長200m程度は土被りが10m以下と浅いため、
土地の所有権を取得したうえでトンネル躯体の上部に保護盛土をしている。



それ以上奥は、地上部には何か弄られた跡もなく、トンネルがあることがわからない。
しかし、例の中山峠のあたりは深さ300mでトンネルが貫通しているが、
10mピッチで地盤改良を行ったらしく、そのために用地取得などが行われ、
このあたりはトンネル直上に草地が広がっている。
スーパー軟弱地盤だったらしく、
トンネル部分の地質は砂利に水を混ぜたようなものだったらしい。
当然地下300mでそんな状態だと物凄い水圧で湧水するが、
これを全部トンネルから排水したところ、地上の沢が全部涸れたとか。



トンネルの南側は吾妻川をかなりの桁高で跨ぐ。
もっと低いところを通っても良かったのではという感じだが、
沼田市が全域水没するくらいの超巨大ダムが計画されていたこともあり、
この水没域に入らないようにルートが選定されたためとか。


参考

GPSデータの解析結果

ピンクが速度、青が標高だ。
トンネル区間では受信不可だが、平滑線で繋いで擬似的に連続的なデータを生成。
大きな標高の変化、または速度の変化を記録したポイントは、
受信ミスということで同じく前後区間から平滑させている。
トンネル後では受信状態が安定するまで時間がかかり、飛行機でのログよりも安定しない。
安定するまでにトンネルに再突入したりしてなかなか受信できないことも。
標高データを同時に入れたのは、場所の判別がつきやすくするため。


大宮⇒新青森のはやて


盛岡⇒大宮のはやて

やはり那須塩原⇔盛岡間でほぼ全面的に160km/h制限になっている。
ときおり110km/h制限・90km/h制限のところもあるが、
一方で一時的に200km/hを出しているところもある。
駅間単位ではなく、かなり細かく区切って設定されているようだ。
白石蔵王付近や古川付近など、
結構仙台に近く大ダメージだったような場所でも200km/h出している。
那須塩原と新白河の間に明確にサミットがあるが、それ以外は平坦だ。



福島⇒新庄

特に福島米沢間で遅く、70〜90km/h程度の低速走行を強いられる。
また明らかに標高差が大きく、板谷峠が明確なサミットになる。
確かにここにトンネルを掘りたくなるのも判る気がする。
米沢山形間もやや遅く、こちらは急勾配も少ないため、改善の余地はありそう。
また単線のために運転停車しているのも痛い。
山形新庄間は停車駅以外はほぼ120km/h程度出ており問題なさそう。
ちなみに東北新幹線が高速化すると、
仙台経由で仙山線で行くほうが所要時間は短くなるとか。
それじゃあ山形新幹線は何だったんだという話になってしまう。
やっぱり山形新幹線も頑張ってほしいところだ。



秋田⇒盛岡

全体的に山形新幹線よりは速く130km/h出ている区間も多い。
しかし距離が長いため所要時間は長く、
130km/h以上への高速化の必要性は高いようにも思える。
区間別で見ると田沢湖盛岡間が遅く、県境が明確にサミットになっている。
ここの部分をバイパスできれば効果は大きいものと思われる。
秋田〜田沢湖間は、単線での運転停車があるものの、
それ以外の部分はほぼ130出ており問題は少なさそう。
地形も割りと平坦なことが標高データからもわかる。