レポート
2011/04 浦安⇒東京⇒横浜ヘリフライト
浦安へリポートを起点に東京上空の遊覧飛行と、
横浜のみなとみらいヘリポートを基点に遊覧飛行を行っている会社があるが、
横浜にはヘリの格納庫がないため、浦安から横浜までヘリを回送する必要がある。
回送便は、乗客が居ても居なくても飛ばさなくては行けないので、
たいていの場合、格安で乗ることができる。
一般にはこの機種(AS355N)の場合、1時間あたり50万円程度のチャーター料になる。
今回、その回送便に乗ったので報告する。
浦安へ。
浦安ヘリポートからスタート。
今回の機種はAS355N、6人乗りの中型機で、
双発ターボシャフトエンジンで計800馬力以上。
高速回転するテール・ローターが超かっこいい。
東京ディズニーリゾート沖を通過。
まだ一部は液状化の被害があるように見えた。
荒川沖を通過。
東京へリポートの直上を通過する。
こちらはヘリ同士なので上空通過は柔軟に認められているようだ。
道路沿いにあるゴルフ場は、道路へホームランが多そうだな大丈夫か?
その先の東京臨港道路は、いままでは銀河鉄道の発射台みたいだったが、
今年の2月にとうとう先端がつながった。
湾岸線に平行するように飛ぶが、こちらが80kt程度は出ているため、
どんどん車を追い抜く。
遠くには東京スカイツリーが見える。
こちらよりも高いのはさすがで、上空から見るとまさに天を突き刺すかの如し。
右席に機長、左席に整備士が座り、後ろ席に着席。
乗客は僕1人のみの貸切だ。
有明地区を通過。
レインボーブリッジ付近から先は羽田の管制圏で侵入不能。
東京都心へ。
首都高速が一望。
車が流れる様子は見ていて非常に面白い。
東京タワー。
速度180km/h、高度480m。
意外と近いように見えるが、これでも東京タワーの先端から150m以上の高度差がある。
気流がやや悪く、ゆれる。
Gが抜ける瞬間と掛かる瞬間には、
トルク計の数値が上下に跳ねるが、ローターの回転数はほぼ変化なし。
大慣性のために多少の揚力の変化は吸収できるのかな。
トルク計・排気音計の針が2本あるのは、エンジンが2基あるため。
トルクは100%までは到底いかない。
これは100%まで使うと、トランスミッションが耐えられないため。
ただし、片方のエンジンが停止した場合には100%まで使うことができる。
自動車でもツインターボのやつならブースト計が針2本にできるか?
新宿と明治神宮。
山手線を横断する。
恵比寿駅。
東急東横線、中目黒駅。
かなり短い間隔で駅が続いているのがはっきりわかり、面白い。
西側へはひたすら住宅街が続く。
東急目黒線大岡山駅。
このへんは基本的にすべて高級住宅街。
東急線が遅くて混雑するのによく理由がわからなかったが、
地盤高は高いらしく液状化などとは無縁で、さすが昔からの山の手といったところ。
多摩川を横断。
東急多摩川線と横須賀線が交差するところだ。
新幹線と交差する。
こちらは100ノット(190km/h)なので、最高速の新幹線(160ノット)よりも遅い。
しかし、この区間ではATCにより
最高速度が170km/h(90ノット)に抑えられており、こちらのほうがやや速い。
最近開業した湘南新宿ラインの武蔵小杉駅。
東急線が入り乱れるなか、いきなりここに駅が開業してしまうと、
品川まで1駅という感じになってしまうので、だいぶ東急の営業妨害になりそう。
横浜に向かって高度を下げ始める。
東海道本線・京浜東北線・横須賀線・京急線など。
駅は京急線の生麦駅。
高度を下げ始める。
そのためトルクは40%まで低下、これなら片肺でも何とかなりそう?
騒音を避けるためにいったん海上に出て、その後ヘリポートへ。
首都高だ。
横浜へ。
船舶の直上を通過する。
バンクをとって応えたい(おいおい)。
みなとみらいヘリポート。
無事に着陸。
今度は、本来の目的である横浜の遊覧飛行に機体が使用される。
ノリノリの姉弟を乗せて、母親が不安そうな表情でか見守る中を、
ヘリが離陸していった。
その後は電車で戻る。
秋葉に寄り、買い物をして、無事に帰還。
飛行緒元
高度と速度をプロット。
X軸の一番左が浦安、一番右が横浜。
巡航高度は600mを維持、速度は対地で170km/h程度を維持。
一般にヘリの場合、離着後は高度を稼ぐことよりも速度を稼ぐことに重点をおき、
いったん速度を一気に上げてから高度を徐々に上げていくことがわかる。
速度が小刻みに上下しているのは、気流の影響のためと、GPSの精度のため。
10秒間隔の測定のため、測定点間は500m程度あり、
GPSの誤差20mは最大4%の誤差となって現れる。
高度と上昇率をプロット。
激しく上下しているのは、GPSの誤差によるものと、揺れのため。
ルートについて
浦安から横浜までは、直線で結ぶとどまんなかに羽田空港がある。
大型機が数多く離着陸する羽田空港の直上をヘリで飛ぶのは非常に危険。
白地図は(C)CraftMAP
ピンク色ラインが今回飛行ルート。
羽田空港から半径5マイルは、羽田の管制圏となっていて、
羽田に離着陸する飛行機以外は原則として飛行できない。
また、空港の周辺には、
離着陸する飛行機のルートが「特別管制区(東京PCA)」として設定され、
こちらも有視界飛行のヘリは飛行できない。
この特別管制区は浦安ヘリポート上にも設定されているので、
直線で飛ぶことはどう頑張ってもできない。(パターン1)
さて、では次に距離の短い、東京湾側に迂回して横浜を目指す方法がある。
これは、東京湾アクアラインの付近で、
東京PCAの下限高度が700ftに設定されており、
一方で航空法の最低安全高度が500ftがあるため、
僅か200ft(60m)のスキマをギリギリで飛行することとなるうえ、
最低安全高度ギリギリの低空を海上飛行することとなり、
任務がある軍用機ならともかく、
ただの通過のためだけに民間機が行うのは、通常妥当ではない。
(パターン2)
では、今度は都心側に迂回する方法である。
これであれば、浦安付近の東京PCAの制限がなくなるまで低空飛行をし、
その後都心の建築物を避けるため上昇し、いずれの規制からも回避可能。
騒音対策のため2000ft程度を飛行すればなお良い。
このパターンは実際には東京へリポートの管制圏(上限高度1000ft)に抵触するが、
これはお互いヘリ同士なので柔軟に運用されているようだ。
(パターン3)