旅行記



2010/11 御巣鷹山


1985年8月12日、羽田発伊丹行きの日本航空123便が、
油圧系統の損傷により操縦不能となり、
群馬県・埼玉県・長野県の3県境付近の御巣鷹山の尾根に墜落した。
これにより乗員乗客524人のうち520人が死亡する大惨事となった。
墜落から25年経過するが、未だに墜落地点には慰霊碑等が維持されており、
当時の状況を今に伝えている。
どういう状況か確認したかったため、行ってみた。



御巣鷹の登山口までは関越道のICから一般道を延々と2時間半走らなければならず、
非常に大変である。



駐車場。


登山口からは登山道をいく



実際にはかなり良く整備されており、登山という感じでもない。




すぐに慰霊碑までは到着する。
付近には各人の慰霊塔などがあり、遺品なども安置してある。

自分は不健康だが、例えば脳出血とかで若くして突然死したとしても、
それも織込み済みで天寿が設定されていて、十分に天寿を全うしたものと考える。
しかし、こういう外的要因の事故で亡くなる場合、明らかに天寿全うではなく、
亡くなった人はかなり無念であると思う。



斜面の一番下は、生存者4名が発見された場所でもある。
生還した要因としては、
・突入角と斜面の角度が同じで、地面と平行に衝突し、衝撃が数十Gと小さかった
・滑走した距離が200mと長く、何か硬い物に衝突しなかった
・木々を薙ぎ倒しながら徐々に減速できたため、減速度が10G程度と緩かった
・後部胴体だけが分離して滑走したたため、燃料タンクが無く、炎上しなかった
・生還者は体重が軽かったため衝撃に強かった
・生還者は女性だったため外的損傷に対する体力が高く、救助までの1晩を持ちこたえた
などが挙げられる。

生存者は僅か4名だが、この4名による証言は事故原因の究明に大きく貢献し、
最終的には同種のほかの事故を防ぐことにつなっがた。
実際、その後ユナイテッド航空で油圧系統が全損したが、
パイロットが油圧全損に対する想定を行っていたため、
何とか空港に帰還することに成功、不時着では爆発炎上したが、
それでも多くの生存者を残すことに成功したのである。
そういう意味では、この4名の生存者が出た意味は大きかったと考える。



さて、フライトシミュレータでは、故障も設定できる。
操縦翼面の故障も設定可能だが、さすがに「垂直尾翼が無くなった」などはできないため、
とりあえず、エルロン・ラダー・エレベータが故障したものと設定する。
そうすると以下のような感じになる。
■左右の旋回
左右のエンジン推力で調整可能。
かなりバンクもするため、意外と急旋回も可能である。
ただし、後述のようにエレベータが使えないと降下することになり危険。
■上昇降下
エンジン推力で調整可能。
ただし急激に推力を落とすと降下率が大きくなりすぎ、速度が上がるため非常に危険。
急激に推力を上げると上昇率が大きくなりすぎ、失速するため非常に危険。
失速すると容易には回復せず、超過禁止速度を超える恐れもあり非常に危険。
かなりデリケートな操作が要求される。
■速度調節
不可能。
エンジン推力を上下させても、高度が変わるだけで速度は変わらない。
したがって、故障時点の速度に固定されることになる。
ユナイテッド航空の際も、速度を調節することができず、
高速で滑走路に着陸することになってしまったようだ。
フラップをダウンすると機首上げモーメントが働き、速度が下がる。
これで調整は一応可能だが、油圧全損状態だと電動で動かすしかなく、非常に遅い。
また、左右のフラップの出方に差があるとバンクしていってしまい、非常に危険。
JAL123便の墜落の最終的な要因になったのもそれであった。
JAL123便はほぼ垂直の80度近くまでバンクすることとなったため、
高度が急激に低下し、最終的に墜落に至ったもの。
なお、重心位置を後ろにすると、
水平尾翼の効きがよくなった=エレベータアップと同じ効果が得られて、
少しだけ速度が遅くなる。
例えば乗客を後方に集めるなどの方向が考えられる。

全体的には、やはり油圧全損だと浮いているのがやっとの状況で、
空港に帰還などは絶望的である。
こういう状況のなか、無事に着陸させたUA232便は本当に凄い。
ユナイテッド航空232便不時着事故



墜落時の火災で燃えた木も残っている。



さて、ここから先は登山道が一応あるが、山と高原地図では点線ルートとなっている。
夏だと藪が多く通過が大変であろうが、
かなり藪が落ちてルートが明瞭となっているので、県境までは行くことにした。



だいぶ見晴らしが良くなってくる。



登山道は地図にはないが、標識には「三国峠」の案内があり、行けるのだろうか。
ネットの報告だと、ヤブが落ちる冬〜春なら通過が可能なようだ。



ここに限ったことではないが、
上武側と信州側では、県境を境にして植生が全く異なる。
なかなか不思議である。




戻ってくる。



帰りは「浜平鉱泉」に入っていく。
なかなか良い湯であった。
下界は紅葉も綺麗。



温泉のあとは、無事に帰還。


参考


空から見た御巣鷹山周辺。
赤矢印は墜落直前のJAL123便の飛行軌跡。
最終的には、左右のフラップの出方に差があり、
これによりほぼ垂直までバンクしたのが原因で急降下し、墜落に至った。



墜落地点付近拡大。