旅行記
2010/10 利根川源流
作戦名「いざ、大河の一滴へ」
利根川とは、流域面積日本最大の大河であり、
首都圏の水の供給源となっている重要な河川である。
下流域では幅1kmほどの広大な流れとなって、千葉県銚子市で太平洋に注ぐが、
上流域は群馬県の急峻な山岳地帯であり、到達は困難を極める。
源流は群馬県の最北端の大水上山(1,831m)であり、
この山の南面にある三角形の雪渓(通称「三角雪渓」)が源頭である。
ここに至るには、利根川の最上流にある八木沢ダムから、
沢を遡上すること3日を要し、また困難なW級以上の滝が連続し、
沢登りとしては難易度としては最高度のグレードとなる。
しかしながら、多くの沢登り記録を見ると、
一番源流に近い滝(水上滝、2段15m、V級+)から上には、
いくつかの無名滝(5m〜10m、V級)があるのみで、
源頭部から稜線までも険しくないという報告がある。
ということは、最初の一滴を見るためには、
八木沢ダムから3日掛けて遡上する必要はなく、稜線から下ってしまえばよい。
稜線から標高差で200mも下れば普通は最初の1滴が見れるはずで、
そこから下り続ければ400mもしないうちに最初の無名滝が現れるはずだ。
とりあえずこの辺まで行ければ十分だろう。
参考
T級 通常の登山
U級 3点確保を要求される岩登り
V級 ザイルによる確保を必要とする岩登り初級
W級 同・中級
X級 同・上級
僕が経験した最高グレードだと赤岳の厳冬期で、U級+〜V級といったところか?
というかこれ以上は死ぬからやめたいところである。
登山口の十字峡の駐車場は10台と少ないため、前夜に入り車中泊とする。
登山口での車中泊は非常に快適。
ここからスタート。
林道を30分歩いて、丹後山登山口に到着。
ここから丹後山へは標高差1270mの急登となる。
重荷を背負い、ひたすら我慢の登りの連続だ。
避難小屋泊まりの装備を担ぐことになるが、
丹後山避難小屋は天水タンクが撤去されているため、水は全て持っていく必要がある。
今回は1泊なので5リットルを用意。
なのでテント泊以上の重荷となり非常に大変。
テント泊のときはテント分が2kg軽くなるが、
今回は水が3.5kg重くなっているため、合計ではテント泊より重くなっている。
とはいえ、今回はダブルストックの効果か、
コースタイム5時間のところを、2時間50分で到達する。
上昇率450m/時。
ダブルストックは10%の効果があるとよく言われるが、
以前は上昇率300m/時だったので、
今回絶好調だったのを除いても、コースタイムで10%の効果はあると認められる。
丹後山避難小屋。
結構小さそうに見えるが内部は2階建てで結構広い。
トイレも併設されている(たぶん地下浸透式)。
ここからかなり下ると一応水場があるようだが、
地下浸透式トイレの下にある水場はちょっと・・・。
早速昼食にする。
1泊であるが豊富に食料を持参。
内部は綺麗。
昼食後は大水上山に向かう。
この谷底に利根川の最初の1滴があるはずだ。
大水上山。
ここが群馬県の最北端だ。
もう三角雪渓は跡形もなく溶けている。
さて、いよいよ利根川の最初の1滴に行くぞ。
三角雪渓へ藪漕ぎして突入するという案もあるが、
貴重な湿原地帯を踏み込むのはマナー違反。
大水上山と源流碑があるピークの鞍部には、
沢筋が登山道を横切っており、ここから沢筋を辿って下ることが可能。
また沢登りでの最後の詰めになるため、踏み跡もある。
かなりのブッシュを掻き分け、急斜面を転がり落ちるように下る。
(しりもちをついてズボンが汚れてしまった・・・)
急斜面。
だんだん岩がゴロゴロしてくる。
しばらく下ると、標高1660m地点でちょろちょろと水が湧き出している。
ここが正真正銘の利根川の最初の1滴。
感動だ。
そして水がたまり、ゆっくりと流れている。
下っていくと流れは大きくなっていく。
GPSによる支援があるため、道に迷う心配はない。
さらに下る。
さて、ここから更に下っていくと、「水上滝2段15m」が現れるはずで、
これはかなり難しい(というかクライミング装備なしの僕には不可能)ので、
これ以上下ることはできない。
しかし、下っていくと徐々に流れは大きくなり、段差も大きくなる。
「5m程度の無名滝がいくつもある」という報告もあったが、最初に現れたのは2mほどの滝。
これ以上下ると危ないと判断し、ここで沢下りはおしまい。
これがあの大河になるんだなあ、と感動を味わった後は、稜線に引き返す。
稜線に引き返すには、本流をそのまま遡ると三角雪渓の跡地に突入してしまうため、
下ってきた支沢に入り、踏み跡を辿り稜線の登山道まで出る。
その稜線には、「利根川源流の碑」がある。
背後には中ノ岳。
あの中ノ岳の山頂にも避難小屋があり、宿泊に適するほか、大展望だとか。
しかしちょっと行程的には厳しいので、やっぱり丹後山避難小屋に泊まることにする。
小屋の周りには笹原が広がり、まるで幻想郷のよう。
今日は収容30人のうち10人で利用。
内部も清潔で宿泊に適する。
しかし前述のように水はないので要注意。
備品は薄毛布が数枚あるが寝具は持参必須で、毛布はあくまで緊急用か。
快適な避難小屋生活。
水さえあれば1週間は暮らせそう(それ以上は風呂無いので無理)。
寝袋はもちろんモンベル#0(マイナス16℃まで)で快適。
小屋備え付けの薄毛布を床に敷き、
その上にビバークシートを敷き、その上に寝袋を設置。
こうすることで地面からの冷えを防ぎ、また柔らかく寝心地も良い。
ビバークシートは一度ぐちゃぐちゃにしてしまうと畳むのが超大変なのが難。
小屋のすぐ隣には丹後山。
夕日朝日を拝める一等地にある。
一面の笹原だ。
丹後山避難小屋では午後の優雅なひとときを過ごす。
そろそろ夕日だ。
日没と月出(満月なので同時)を見てから寝る。
深夜におきると、満月で結構明るい。(ISO800、F2、15秒)
朝焼け。
しかし曇りの天気で日の出が見れなかった。残念。
避難小屋を清掃し、現状復旧し、撤収。
水は5Lを持参したが、結局使ったのは3Lであった。
曇りの天気のようなので、下山することにする。
太陽も隠れている。
越後湯沢〜浦佐のあたりが見える。
登山口までは1270mの急降下。
荷物がやや軽くなったこともあり、1時間半で登山口まで下山する。
しかし重荷で走ったせいで、翌日に筋肉痛になる。
登山口に戻ってきた。
登山口には「十字峡登山センター」という立派な建物があり、売店もある。
2階は避難小屋になっており、素泊まり1000円で宿泊が可能。
管理人常駐は夏季のみだが、宿泊は避難小屋なので365日24時間いつでもOKだ。
祠も。
その後は自動車で戻る。
関越道の関越トンネルを通ることはあまり多くない。
前回通ったのはたしか、1年前に越後駒ヶ岳に行ったとき以来だ。
関越トンネル。
10kmの直線で深夜なら交通量も少なく、トンネル内なので横風や動物の飛び出しもない。
湾岸線なんかよりも最高速アタックに最適な予感?
ただし標高600m程度あるのでエンジンのパワーダウンがややあるはずだ。
関越道で埼玉へ帰還。
参考
利根川写真ギャラリー
利根川の諸元については、国土交通省のサイトが詳しい。
http://www.mlit.go.jp/river/basic_info/jigyo_keikaku/gaiyou/seibi/tonegawa_index.html
http://www.mlit.go.jp/river/basic_info/jigyo_keikaku/gaiyou/seibi/pdf/tone-5.pdf
(PDFで28MBあるが、これでほぼ利根川の全てを網羅している)
渋川のあたりを流れる利根川。
谷底を流れているわけだが、それでも吾妻川などを合流して流量の多い流れである。
赤城山と榛名山の間の谷から流れ出てくる利根川。
ここからは関東平野に出て雄大な流れとなるわけだ。
埼玉県の妻沼滑空場のあたりを流れる利根川。
グライダーより撮影。
川の上は下降気流があることが多くグライダーでの進入には要注意。
河口から200km近くあるのにまだまだ幅が広い流れだ。
成田のあたりを流れる利根川。
チャーターした航空機より撮影。
眼下に見えるのは大利根飛行場で、モーターグライダーが主に発着する飛行場である。
利根川の河川敷には、こういうように飛行場が非常に多い。
河口より70km。
6月には水面が輝くのが眩しい。
まさに首都圏のみずがめ。
河口より60km。
成田に着陸進入する航空機。
背後には利根川。
飛んでいる飛行機が下に見えるということは、
もちろんこの飛行機より高い場所を僕は飛んでいる。
河口より50km。
水田地帯。
JR鹿島線からの利根川。
河口より35km。
銚子市街を流れる利根川。
河口より4km。
河口付近では幅1kmほどの雄大な流れになり、これは日本では利根川だけである。
河口には河口堰と、銚子大橋が架かっている。