旅行記
2010/09 北岳山荘
北岳は日本2位の標高(3,193m)の山であり、
その直下2900mには「北岳山荘」という山小屋がある。
市営の山小屋であり、近代的な設備と抜群の展望が評判。
今回は、大混雑が予想されるためテント2泊で計画した。
計画の概要は以下のとおり。
0日目 アプローチ日 甲府に入り前泊をする。
1日目 荷揚げ日 北岳山荘にテントを荷揚げする。
2日目 サミットデイ 山頂往復をする。
3日目 撤収帰宅日 テントを撤収し、下山、帰宅する。
0日目
大混雑のあずさで甲府に入り、ホテルに宿泊する。
都合により夜20時に甲府入りとなるのが辛い。
余裕があれば前日に広河原くらいまで入れると楽なんだけどなあ。
広河原に幕営なら安いし、ばっちり睡眠もできる。
甲府宿泊だとホテル代が掛かるのが痛い(3400円だった)。
甲府駅。
iPhone4って、JR東日本の自動改札機に似てる気がするのは僕だけ?
見れば見るほどiPhone4が縦にズラリと並んでいるように見える。
1日目
朝3時に起床し、朝4時のバスで広河原を目指す。
朝4時はなかなか良い時間の設定で、
他の登山口へのアクセスのバスが異常に遅いのを考えれば、
かなり頑張っているといえる。
富士山も、例えば新宿発1時→5合目4時、
みたいな設定のバスがあれば結構客が入りそうな気がするがどうだろう?
とにかくこの日は大混雑で、バスは計6台となった。
2000円と結構高いが、着席が保証されるようになったのか、立ち席の人は無し。
この2000円にはマイカー規制協力金100円が含まれている。
マイカー規制に協力し公共交通でアクセスしているのに
金を取られるのは結構納得がいかない。
でも「入山料」とか「有料道路通行料」という形だったら、
仮に1000円でも文句を言い出す奴は少ないと思うので、
そういう形にしたほうがいいと思う。
なおこの協力金はゲートの管理費(要するに人件費)だそうだ。
でも南アルプスのマイカー規制のいいところは、
高頻度で乗り合いタクシーがあり、9人揃ったらバス並みの値段で運行するので、
時間が決まっているバスか、高いタクシーしかないほかの場所より、
だいぶ安く済む可能性が高いのが助かる。
この方法は非常に良いと思うので、他の地区でも是非実施してほしい。
広河原を6時45分スタート。
重量はなんと18kg!
GWの南アルプス避難小屋縦走のときとほぼ同じ重さである。
あのときと比べて、アイゼン(1kg)・ピッケル(0.4kg)がないが、
その分テント(1.8kg)が加わっているので逆に重くなっている。
でも体重の35%を背負えってのが無理だっつーの!
富士山のトレランのときと同じくらいの身体負荷を目安に進むが、
(だいたい息がゼーハーになって会話ができないくらいのレベル)
それでも周りとペースを併せて歩くのがやっとの状況である。
北岳はお花畑が有名である。
圧倒的な存在感を以って立ち上がるバットレス。
二股分岐。
ちょうど出発から2時間経ってほどよく疲れてきたので、30分ほど休憩する。
ちょうど友人達が広河原をスタートしたくらいの時間であろう。
こちらがバテる可能性もあるが、バテたとしても2時間のリードタイムがあるので、
追い付かれる心配は少ないだろう。
追い付かれたらゆっくり行けばよい。
八本歯のコルには11時15分到着。
コースタイムとぴったり同じで、上昇率も300m/時であった。
もし空身なら600m/時は堅いので、
全重量が1.35倍になるとタイムは2倍になってしまうわけだ。
写真は絶壁のトラバース。
写真だと怖そうな感じだが整備状況が良く、恐怖感はない。
残雪期だと落ちる奴が続出だそうで通行止めも頷ける。
北岳山荘に到着。コースタイム5時間40分に対し、5時間30分で到着。
めちゃくちゃ疲れた。
富士山トレランと同じくらいの負荷だった。
でも富士山なんか3時間もあれば頂上まで行ってしまうので、
5時間半もこのペースはめちゃくちゃ辛い。
感覚的には空身でフルマラソンくらいに感じたぞ。
ここで早速幕営を申し込む。
大混雑が予想される中でもテント場に張ることができた。
正面に富士山を望むことができる超1等地だ。
僕のテントは3人用のものでなかなか広いが、
今回は友人もテントを持参するのでこのテントは僕専用だ。
なんという贅沢。
寝袋もモンベルの#0(快適温度-16℃、限界温度-31℃)を持参。
超かさばる上に重かった(2.2kg)が、
これなら今回の気温(0℃程度)なら下着姿でもヌクヌクで寝れるはず。
しばし休み、小屋の様子を観察して、写真撮影をして、飯を食って、
とやっていると、友人たちが到着した。
僕のテントのすぐ上の段に設営し、休憩とする。
友人のテントは、僕のテントと異なりゴアテックスの高性能のやつである。
これならば、気温が下がる状況下でもかなり快適そうな感じがする。
2人用で幅120cm程度とのことで、2人で使うのは結構狭そうな感じだが、
その分軽量であり、問題ないだろう。
(僕のテントは広い代わりに1.8kgもあり激重い)
ツェルトで宿泊する勇者もいる。
夜は静まり返るテント場。
しかしトイレの明かりが夜もともされており結構まぶしい。
このトイレ、非常に設置費用維持管理費用が掛かるのはわかるのだが、
16基はさすがにいらないんじゃないか・・・?
超ピークシーズンなのに2基だったが行列ができる程度だったので、
せいぜい4基もあれば十分な気がする。
「事業仕分け」で山小屋トイレ補助事業が廃止されたのであれば、
なおさら金は厳しいはずであるのだが・・・。
ちなみに1回の使用で500円の費用になるそうだ。
輸送費1000円/kgの山の世界では、
1回分の屎尿の量が500g以下なら、下界に輸送してしまったほうが安い計算。
1回分の量が何gなのかはデータがないが、どのくらいだろう。
なお、液体物は加熱するなどで乾燥させてしまえば軽くなる。
加熱するための燃料代よりも軽くなるため、コストは有利。
というか乾燥物になっているのであれば、燃やしてしまえば良いような気も。
燃やすなんてとんでもない、と考えるのはわかるが、
ヘリで輸送するのも空中でジェット燃料をバンバン燃やしてるわけで。
甲府方面を撮影するとほのかに明るい。
ISO800での撮影に約2倍に増感しているのでさすがにノイジーな感じ。
2日目
日の出。
富士山と日の出はなかなか絵になる。
富士山からの日の出は何回も見たが、富士山から見ると富士山が見れないという難点が。
そろそろかな。
D80で微速度撮影しているので、こちらは普通に撮影する。
太陽だ。
HDR
HDR
まだふもとの伊那谷は夜だ。
多くの人が寒い中、日の出を見る。
稜線にテントを張るのは大変だろうな。
でも超1等地だな。
まぶしくなってくる。
テントを1等地に引越しして、その後は空身で間ノ岳と北岳を往復する。
往復で5時間のコースタイムなので楽勝である。
今日は1日高山帯の稜線散歩だ。
中央道や中央線から見ると、白峰三山の稜線は滑らかに繋がっているように見えるが、
実際に歩くと結構アップダウンがあってしんどい。
日本3位の標高の穂高岳(3,190m)ではケルン積上げ作戦により、
日本2位の標高の北岳(3,193m)の標高を追い抜こうと頑張っているが、
山頂が広い間ノ岳(3,189m)のほうがケルンを積上げやすそうな感じがする。
間ノ岳直下には、草紅葉が輝くカールに万年雪が乗っかっている。
なかなか綺麗。
大展望。
草紅葉が始まっている。
その2
中白根山の稜線から見る北岳が一番カッコいいかも。
草紅葉が絨毯のごとく。
快適な稜線だ。
北岳山荘に戻る。
マイテントに戻り、補給をして、今度は北岳往復だ。
北岳山荘が超かっこいい。
はるか下(2620m地点)には北岳小屋跡があり、ここが水場になっている。
標高差300mはあるので、往復90分は掛かるだろう。
小屋で水は1L100円で売っているので、買うのが妥当だ。
コンビニでも「南アルプスの天然水」は2L200円くらいするし。
ただ、小屋と水場の位置関係を考えるとそのまま飲用するにはどうなのよ。
実際には問題ないらしいし、
小屋でジュースを買うと500ml400円と8倍も高いので、飲みまくったけど。
(でもオレンジジュースとかはビタミン補給に必要なので注意か)
北岳山頂。
なかなか良い景色。
クライマーも多い。
単に歩くだけの我々ハイカーと違って、技術が要求されることをできるのはすごい。
衣装なんて+1kgくらいの不利でしかないのだが、クライマー達の装備はハンパない。
甲斐駒&仙丈ケ岳。
ガスが山頂に到達し、ブロッケンとなった。
草紅葉のなかを下山する。
北岳山荘に戻り昼食にする。
フリーズドライ食品が中心であるが、これが300kcalとかしかないのに300円する。
これなら小屋で売ってるカップめん(300円)を買ったほうがマシな気が。
それでもなお、小屋で2食(2,700円)を食べるよりが良いけどな。
値段以上に、自由な時間に食えないのも不便だし、
食事も「○回戦」とかって順番で押し込まれる。
これじゃぜったいゆっくりできないからな。
夕方には友人がもう1人北岳山荘に到着するはずだ。
風下側は低圧部となって、雲を発生させている。
友人を北岳山荘にチェックインをさせて、
部屋の中に荷物を搬入して、その後に外のテント場で夕食。
強風に耐えられるようにしっかりとアンカーを打つ。
HDR
夕日が綺麗。
高地の夕日はなんでこんなに綺麗なんだろうなあ。
夕日見物をする人が多数。
ガスが幻想的。
だんだん暗くなる。
若干曇っていたせいか、そんなに寒くなく、むしろ寝袋に入ると少し暑い。
夜は冷えてきて涼しくなってきて、快適に寝ることができた。
3日目
おかげで次に目覚めたときは朝4時。
既に少し明るくなっていた。
雲海と雲海の間に浮かぶ不思議な富士山。
山頂を経由して下山する。
三角点と、背後には雪のごとく花崗岩が眩しい甲斐駒ヶ岳。
肩の小屋。
ロケーション的には北岳山荘よりもよく、標高も高いが、
ポンプアップの水がないため、雨水なのが難点。
テントでの宿泊ならば、どうせ混雑はほとんど関係ないので、
北岳山荘のほうが良い気もする。
草すべりを下る。実際には滑れるようなところはない。
途中、白根御池小屋で昼食にして、広河原に下山。
タクシーで芦安駐車場に戻り、車に荷物を搬入して温泉へ。
芦安温泉はなかなかのアルカリ泉だが、
湯量の問題で循環式になっているのはしょうがないだろう。
というか、そもそも山ヤが入りまくっているせいで
湯船に垢らしきものが浮いているのはしょうがないか・・・。
その後甲府駅まで車で出て、スーパーあずさで新宿まで。
その後は湘南新宿ラインで埼玉へ帰還する。
以上無事に帰還。
テントだったので2泊で宿泊代は1200円と激安。
食料費も5000円程度と非常に安い。
金がないのでテント山行は助かる。
結局、下りが原因で筋肉痛になってしまった。
普段山では筋肉痛にはならないため、かなり久々である。
下りについては、
通常ペースの3倍速で駆け下りても痛くなることはないのだが、
今回は重量が重かったこともあり、
ペースがゆっくりだったのにも関わらず筋肉痛となった。
下りのダメージは想像以上であった。
参考
甲府盆地から撮影した白峰三山。
北岳・間ノ岳の稜線は滑らかに繋がっているのがわかる。
実際は歩くと結構アップダウンがあるのだが・・・。
航空機から撮影した南アルプス。
1月の南アルプスは生死が交錯する場所であるが、
こんな場所に羽田から15分で行けるんだからすごい。
もしこんな場所に不時着したら助かりそうもないな。
南アルプスに固定翼機が墜落した例は意外と少なく、
戦中に陸軍の爆撃機が墜落した話を聞いたことがある。
それ以外は付近に空港があるわけでもなく、
巡航中に墜落するケースは少ないので、やはり無いということになる。
航空機から撮影した北岳山荘。
北岳山荘が上空から目視で確認できるのは凄い。
こんなとんでもないところに宿があって、
国の発行する地形図にも堂々と名前が載っているんだからな。