旅行記
2010/03 乗鞍岳
乗鞍岳は岐阜県と長野県の県境にある3,026mの山である。
比較的なだらかな地形のため山スキーが盛んであること、
及び標高2000mまでスキー場のリフトが到達していることから、
3000m峰としては冬でも登りやすい部類に入る。
2月からは中腹2350mの位ヶ原山荘が営業を開始し、
冬型が緩んでくる3月頃からは春スキーが盛んになってくる。
春スキーは頂上までの車道が開通する6月いっぱいくらいまでである。
しかしながら4月とはいえ、北アルプスの3000mはバリバリの冬山であり、
中途半端な覚悟では登頂はできない。
スキーヤーは大半はアイゼンピッケルを持っていないか、
持ってても技術等の問題により、多くが2800mの肩の小屋で引き返しとなる。
我々はスキーヤーではないから、頂上まで行くことが可能なはずだ。
ということで、中腹の位ヶ原山荘に宿泊し、頂上を狙うこととした。
| 乗鞍の冬から夏までの流れ 1月 バリバリの厳冬期で登る人は少ない。 車道は1400mで冬季閉鎖だが、スキーのリフトが2000mまで到達している。 バックカントリースキー(BCスキー)のコースが、 リフト最上部2000mから更に上部2300mまで達しているため、 そこまで行くスキーヤーは居るようだが、 それ以上は森林限界以上の過酷な世界となるため無人となる。 2月 冬型が緩んでくる日が出てくる。 2月からは中腹2350mの位ヶ原山荘が営業を開始し、 そこが絶好のベースとなるため、冬型が緩んだ日には、 2800m付近の肩の小屋まで到達するクライマーもいるようだ。 3月 冬型が緩み、中腹2350mの位ヶ原山荘が賑わう。 BCスキーヤーは2800mまで到達が可能となり、 クライマーは3026mの頂上まで行くことが可能となる。 4月 スキー場が休止し、ゲレンデの下となっていた道路の除雪が実施され、 車道が中腹の1800mまで開通する。 一方リフトは営業休止となるため、ここから歩いて登ることになり、 体力的な条件だけで言えば3月よりもしんどい。 気温は上昇し、雪崩の危険があるが(2009-2010冬シーズンは1名死亡)、 かなり登りやすくなる。 5月〜6月 車道が中腹の2350mの位ヶ原山荘まで開通する。 頂上までの登頂はかなり容易になる。 残雪はまだ大量であり、2800mからの大滑降が楽しめる。 また雪が緩み、クライマーでなくても3026mの到達が可能となる。 7月〜9月 車道が頂上の2701mまで開通し、夏山シーズンとなる。 7月一杯は雪渓での夏スキーが楽しめる。 普通の観光客でも3026mへの登頂が可能となる。 |
主なポイントの標高
1400m 3月までの車道の冬季閉鎖地点
1800m 4月の車道の冬季閉鎖地点
2000m 乗鞍高原スキー場のリフト最上部
2300m 乗鞍高原スキー場のBCスキーのツアーコース終点
2350m 位ヶ原山荘。5月〜6月の車道の冬季閉鎖地点
2700m 車道終点。夏はここまで車で行ける。
2800m 肩の小屋。スキーでの最終到達点。
3026m 頂上。

まずは新幹線で長野(1時間)まで行き、
そこからワイドビューしなので松本(50分)まで。

松本で、スーパーあずさに乗ってきた友人で合流する。

ここからは、松本電鉄で新島々まで(30分)行き、
そこからバスで乗鞍高原スキー場まで(1時間)だ。

スキー場は既に降雪があってあんまり天気がよくなさそう。
でもリフトは順調に動いているようなので、リフトを3本乗り継いで頂上までいく。

リフト1回券×3枚=1200円して結構高いのが難点。
一気に標高600mも稼げるうえ、
ゲレンデを登るのはスキーヤーと正面衝突する危険があり、
アイゼンでゲレンデを穴ボコだらけのするのも迷惑な話なので、リフトを使うのを推奨である。

ひたすら上を目指す。

リフト最上部(2000m)から先は、バックカントリースキー用のコースである。
リフトは設置されておらず、自分の足で登る必要がある。

でも結構シュプールが残ってるんだよな。

BCスキー用のコースを終点までいくと、まさかの大平原でホワイトアウト。
トレースは降雪で瞬く間に消され、戻るに戻れない。
しばらく登ると崖っぷちの斜面が現れ、下るわけにもいかないので方向転換する。

仕方ないので、以下の方法で山荘を目指す。
1 この大平原は夏は道路が蛇の如くウネウネ通っているので、
カーブには必ずカーブミラーが設置されており、
これは雪原上にポールだけが顔を出している(上の写真)。
2 山荘は雪に埋まっているとはいえ、道路沿いにあるため、
道路を辿って歩けば必ず山荘までいくことができる
3 まず適当に歩き、カーブミラーを見つける
4 GPS担当が、次のカーブミラーがあるべき方向をGPSで定める。
(「進行方向150度!」など)
5 コンパス担当が、コンパスで進むべき方向をGPS担当に指示する
6 GPS担当がホワイトアウトのなかを前進する
7 コンパス担当が後ろから追従して、方向のズレをチェック
8 ズレがある場合はコンパス担当がGPS担当に伝えて修正する
(「修正、左10度!」など)
9 次のカーブミラーのポールを発見することができる
10 4に戻る
を繰り返し、山荘まで到達することができた。
GPS役とコンパス役を分担すると効率が良い。
方向の指示は、「北北西」だとかではなく、
「340度」などど360度方式のほうがわかりやすいが、
これは2人とも航空機の運行に関する知識が一般人以上にはあったためで、
普通であれば北北西とかのほうが正確性では劣るものの判り易いだろう。
それにしても視界がない中、自身を正確に導けるのは、
まさに計器飛行と同じである。なかなか面白い。
一緒に迷ったおっさん2名は我々の支援がなければ結構ヤバかったのでは。

僅かにガードレール(ガードロープ)が顔を出す。
これとカーブミラー以外にはここに道路が通っていることなど想像もできない。
それなりに道路っぽくなっていることを期待したのだが、
別の意味で期待はずれであった。

山荘に無事に到着。
まずは濡れたものを乾燥室に干し、部屋に入る。
デジカメも一瞬で結露するので要注意である。
室内はこんな感じで結構快適だ。

しばらくぐだぐだしていると空が晴れ上がってきた。

一面の青空で非常に美しい。

うむ。

小屋の前は(夏は)道路になっており、
強風が吹きぬけるのかシュカブラが発達している。
望遠レンズで撮影するとほどよく圧縮効果があり、なかなか美しい写真に仕上がる。

山荘の奥の斜面は2月にスキーヤーが雪崩に埋没して死亡した。
斜度的にも危険なところであるが、
通ったときにはガスっていたために気付かなかった。
雪も降っており新雪表層雪崩の危険が大だったが、結果的にはセーフだった。
というかアウトならこの記事を書けていない。

まさかここが道路だとは思わないだろうな。

遠くには山頂が見える。
明日はあそこまでいくぞ。

望遠レンズは人物撮影にも使えておもしろい。

部屋はこんな感じ。

乾燥室。
カラフルな雨具が並ぶ。

夕食。
1パーティ1鍋であるので気を使わなくてよい。
そして19時に就寝。

翌朝は6時に起床。すでに明るくなっていた。

月が。

そして朝日が昇る。

食堂では朝飯の準備が着々と。

で、朝食。

準備をして出発。最初からアイゼン・ピッケルの体勢。
しょっぱなから急なのぼりになり疲れる。

山荘が見える。なかなかよいところに建ってるな。

登ると大平原になる。
昨日ホワイトアウトして彷徨った大雪原である。

夏はトイレがある場所だが雪で完全埋没だ。

(夏の写真)
ここが夏は道路なわけだ。
滋賀草津道路と共に、
日本でただ2つの森林限界以上の場所を走る道路である。
もっとも、マイカー規制が敷かれているから、
自転車で走るか、歩くか、もしくは冬にスキーで滑走するか。
滋賀草津道路はマイカー規制されていないので、
こちらは自分の車で走ることが可能だ。

めちゃくちゃ明るい。
F11,1/400s,ISO100とかになる。
まぁ普通のデジイチなら1/4000sくらいまではいけるはずなので、
F5,1/4000s,ISO200くらいでも平気そう。
これならベース感度200のカメラでも画質劣化なしで撮れる。

夏の写真

南極の観測基地みたいである。

ここから先の肩の小屋に近づくにつれ、
雪面がクラストしてくる。
表面は風に磨かれガチガチの氷であり、アイゼンが食い込まない。

コロナ観測所。
とんでもないところに建っているな。
ちなみに老朽化のため2010年3月末で閉鎖されたとのこと。

ここからは急な登りである。
相変わらず雪面はガチガチの氷。
転んだらかなりヤバイ。
所々に岩が顔を出しており、滑落したら打ち所が悪ければ死ぬかも。
写真はビビりながら登る筆者。

なかなかよいかんじ、

そろそろ頂上に到着だ。
最後の祠の横を通り頂上に達するまで油断せずに。
おっこちたら命はなさそうな感じである。

夏は人で賑わう頂上も貸切である。
ものすごい氷がついている。
下から見ると岩場にしか見えない。

とりあえず記念撮影。

低温と強風のために完全装備。
もはや誰だかわからない状態でモザイクいらんかも。

しっかしすごい氷である。

ちなみに夏はこんなん。

ああ、なるほど、記念撮影したあたりに三角点があったんだな。
でもまぁあの雪じゃ発掘はどうがんばっても無理であろう。

しかしいい景色である。

山を横断するように林道がついているのがわかる。上高地乗鞍スーパー林道である。

御嶽山もまだまだ雪の中。
あちらのほうが斜度がきついから難しそうである。

帰りは肩の小屋からの危険な直登ルートを避けて、
斜度の緩い斜面を適当に降下してしまう。
みんな同じことを考えるようで、後続のパーティも我々に追従してきてわろた。

肩の小屋で休憩。
しかしすごい景色だ。
なんか南極の基地みたいな感じで日本とは思えないな。
ま、気候的には森林限界以上であることから、
少なくともツンドラ気候ではあるが、
普通ツンドラ気候の場合それほど降水量は多くないが、
ここの場合ものすごい降水量なのが異なる。

南極。つーか3DMark2006で見たことがあるような。

神社も雪に埋没。

夏は大賑わいなんであろう。

帰りは滑落停止の練習をしながら下るが、
これが結構地面の凸凹が痛いのがつらい。

登っていく人多数。
大半はスキーヤー・スノーボーダーで、肩の小屋までであろう。

あとは適当に乗鞍高原温泉スキー場を目指して降下する。

上空を小型機がパス。

ゲレンデ歩きはしんどい。
できるだけ斜度が急なコースを通ることにして最短距離で下まで下る。
上級者用コースではシリセードが可能ではある。
というかスキーヤーにとっては大迷惑。
下りもリフトに乗せて欲しいところである。

行きと同様にバスに乗り松本へ戻る。

松本。
ここで中央線方面の友人と別れる。
HDRは経験上±2EVの16倍で十分である。

一旦新幹線にのってしまえば一気に帰還だ。
高速道路を交差するが高速道路の車が止まっているかの如く速い。
高速道路が安い今のご時勢、
鉄道が対抗するには新幹線レベルの速さは必須であろう。
ちょうどこの日、友人が(埼玉から)名古屋まで車で行っていたが、
最終的なDoorToDoor(D2D)の時間は新幹線とタイであった。
名古屋でやっとD2Dで新幹線のほうが速いくらいなので、
長野くらいでは車のほうが速く、ましてや在来線特急では勝負にならない。
高速道路と交差する瞬間を撮るのはなかなか難しく、
高速道路の幅が25mほど、こちらの速度が毎秒60mくらいなので、
少なくとも毎秒2.4コマの連写性能があれば大丈夫だが、
僕のデジカメは毎秒1枚なのでなかなかうまくいかない。
毎秒10枚くらいのデジカメなら余裕なんだけどなあ。
(該当する機種がカシオくらいしかないが)

佐久平駅を通過するときに撮影した、
小海線のハイブリッド車両と背景の浅間山。

軽井沢駅では通過する列車があったが、極めて低速でガッカリした。
川島令三の著書「特急列車高速化への提言」では、
「軽井沢駅の通過は30km/h。これを275km/hにすれば数分の時間短縮になる」
との記述があったが、
軽井沢駅のすぐ高崎寄りにR=800mのカーブがあり、
カント180mmとしても制限速度は145km/hになってしまうことから、
ATC信号は110を現示していると推測される。
その後軽井沢からの30パーミルの下りは
210km/hの抑速ブレーキを使用しながら降下する。
E2系N編成のスペックは以下のとおり。
編成重量366トン
定員630人
編成出力7,200kW
計410トン
410m*10g*xh=7200
1.756m/s
210km/h
以上のスペックから、登りの場合は210kmhを出すと
編成出力を使い切ってしまうことがわかる。
下りもスピードオーバー危険性を考えると210kmhが妥当であるな。
以上、無事に帰還。

参考
航空機から見た乗鞍岳。のっぺりとした山容なのがわかる。