旅行記
2010/01 本沢温泉・美ヶ原
概要
本沢温泉は、冬季としては日本最高所にある温泉である。
これ以上高い場所には、立山室堂の温泉もあるが、
これは冬季には閉鎖されて行く事ができない。
というわけで、今回はこの冬季最高所の温泉に行くことにした。
計画編
今回は温泉旅行ということで、山経験が少ない人も参加するが、
徒歩3時間20分なので、20代なわけだし、
普段よほど運動不足でなければ大丈夫であろう。
(結論からいうと大丈夫だった。)
天候についても八ヶ岳ということで基本的に晴れなので問題なし。
雪が降ってラッセルになる場合については、
経験者が優先的にラッセルすることで対応する。
ちなみに経験者3人、未経験者2人の構成である。
むしろ問題は登山口までの道路で、
スタッドレスタイヤを装着してはいるものの
雪道の山岳道路の運転は少し不安である。
これについてはチェーンを持参すること対応した。
(チェーンは減価償却済)

関越道→上信越道で佐久ICまで。
群馬県に入るところで浅間山がきれいに見える。

JR小海線松原湖駅に集合。集合時間は9時半。
やや早めについたので暫く準備をする。
既に気温は氷点下で結構寒い。

登山口は稲子湯からになるが、
更に歩く距離が短い本沢入口というところもある。
うまくいけばここを利用して歩行時間を短縮できるかと思ったが、
このように激しい雪で、普通車では進入不可能。
仮に行けたところで、もし降雪があれば脱出不能になってしまう。
どっちみち、進入の段階で車の底をこすってしまうので、撤退。
右にあるのはクローラー装備の雪上車。

登山口の駐車場で準備。
僕以外の全員がアイゼンを装着する。

行程3時間20分のうち全てが樹林帯で、難所はない見込み。
5人のパーティだと体力差が大きいので途中で荷物の配分を見直す。

途中のしらびそ小屋。
気温はマイナス7℃。
それなりに低いが、登りなのでたいした寒さにはならない。

40人収容の小さな小屋である。

本沢温泉の直前で、林道と合流する。
幅員1.5〜2mくらいの林道で、
本沢温泉の車両での物資搬入にも使用されているようだ。
温泉に到着。
比較的規模が大きい山小屋である。

まずは昼飯にすることにする。
売店にはいろいろ売っているので、僕はカップめん、友人はキノコラーメンを注文。

料金はこんな感じ。

次に定番の記念撮影である。
なかなか酷い眺めである。
ちなみに今回の服は、寒いので雪国での定番の「埴輪スタイル」。
要するにスカートの下にズボンをはくのである。
シーツカバーと違い、「ゆっくり」の2匹は体積があるのでザックの中で邪魔である。

今回は、8人部屋を5人で個室利用することとなった。
随分贅沢そうだが、
実際には布団を敷くと5人でギリギリくらいの大きさである。
僕は部屋の中の中2階を使用。通称ロイヤルシングル。
個室+風呂ありだと旅館とそうは変わらない待遇。
なかなか贅沢であるな。
1泊2食付で9900円はちょっと高かったけど。
布団は6人分用意されていたので、少し多めに布団を使うことができた。
おかげでヌクヌクで寝ることができ夜中に目覚めることはなかった。

こちらは3人部屋。
こういう小さな部屋主体の小屋は、1パーティ1部屋になりやすいので好感が持てる。

温泉は、露天風呂(徒歩10分)のほかに外湯(徒歩1分)と内湯があり、
内湯は冬季は凍結のため使用不可。
外湯まで行くことになるが、
これは約4人で一杯になる大きさしかなく、
しかも男女で1時間ごとの交代制となっている。
早速行ってみると4人入っておりとても入れそうにないので、
更に1時間待っていくと、貸切で入浴することができた。
風呂の中はこんな感じ。
壁が凍っており当然ながら室内は氷点下。
だが風呂はかなり暖かく、風呂を出た後に体が冷える心配なさそう。
主成分としては鉄イオンと炭酸水素を多く含む。
pHは6.8くらいだった気がする。

温泉であったまったので、これから夕食である。
山小屋としては補給が良いので、それらの事情も夕食に反映されて豪華。
鍋は1パーティ1鍋ではなく、8人くらいで1鍋なので常識的な範囲で食うのが正解。
にごり酒や日本酒を友人が飲んでいたが、
標高2000mクラスだと下界の3倍くらい酔うので要注意。

すっかり暗くなったので撮影会。
満点の星空である。
ISO800くらいで15秒も露光するとこんな感じだ。

雪が降っていた。
天気予報は晴れなので、冬型による山間部のみの降雪だろう。
積雪は1cmくらいでたいした障害ではない。

朝食はやや質素だが十分である。
鍋の中は味噌汁。

気温はマイナス10℃。
標高2100mであることを鑑みれば妥当なところ。

露天風呂にいく。
日本最高所の露天風呂である。
2人で入ったら一杯になるくらいの小さな湯船であるが、
お湯はそれなりに熱く、入ればあったかそうである。
pHは3程度の強力な硫化水素泉であるようだ。
露天風呂までの道は急坂のトラバースでアイゼンがないと結構怖い。
新雪なので落ちても止まると思うが、これは心理的な問題である。
トラバースの直上を、夏沢峠への登山道が通っているので、
明らかにヤバいときはこっちから降下したほうがいいかも?
滑落しても下は平坦なので大丈夫だろうし。

というわけでこの斜面で滑落停止の練習をしてみる。
が、雪が柔らかすぎて滑れない。
全く練習できずに終了。
ポケットの中などに雪がはいり大変な目にあった。

さて戻ることにしよう。
途中では結構な降雪があった。
フラッシュを発光させるとこんな感じになって激しくKanon。
ちなみに明るい条件だと、
フラッシュのシンクロ速度が最高1/500なのである程度絞らないとダメである。

きれいな雪の結晶。

無事に戻ってきた。

さて下ることにしよう。もちろん運転は慎重に。

途中は佐久平のガストで昼食。
なんか昨日から食ってばっかりな気がするな。
ここで、5人のうち2人は仕事の都合で撤収。
引続き3人で次の目的地に進行。
引続き今度は美ヶ原である。
美ヶ原は、長野県中央部に位置する標高2000m程度の大平原である。
これだけの広さの高原が、この標高にあるというのは日本では例がない。
なにせ高原部の標高は1900〜2000m、最高峰は2034mなのである。
これは西日本のどんな山よりも高い。
夏は車道が上部まで開通しているため、お手軽な観光地になるが、
冬はマイナス10℃以下の極寒の大雪原となって、
観光客はまばらになり、登山者・スノーモービラーの領域になる。
各種施設(美ヶ原高原美術館とか)は閉鎖になるものの、
ホテル3件は営業しているため、宿泊する人は、
冬でも開通している車道を通行して、
4WD+スタッドレス+チェーン装備であれば安全に行くことができる。
(もしくはスノーモービルで!)
夏は観光客でごった換えすが、冬は静寂の美ヶ原を味わうことができる。
ここに限らず、冬の上高地だとか、冬の麦草峠だとか、冬の渋峠だとか、
「夏は観光地、冬は静寂の地」というのがギャップがあって大変面白い。

下界にはほとんど雪がない。
しかし行く途中でだんだん雪深くなり、チェーンを装着する。
今回はFF車にスタッドレスなので、登坂能力には限界がある。
冬にこれだけ高所に達する道路は、実は日本一なのでは?
と思ったが、実は日本一は富士スバルラインである。
こちらは富士山5合目の2305mまで冬でも営業している。
降雪・凍結・雪崩等により5合目まで開通していることのほうが珍しいが、
とにかく5合目まで行ける日もあるのである。
夏だと自家用車最高地点は、同じく富士山5合目の富士山スカイラインの2400m。
実は夏冬であんまり変わらないことに驚いた。

スノーモービルの大集団が通過。
ちなみに国立公園内のスノーモービル走行が次々に禁止される中で、
ここだけは禁止されていないので、
美ヶ原〜霧ヶ峰はスノーモービルの聖地になっているようだ。
冬季閉鎖されるビーナスラインで、結構離れた霧ヶ峰まで行くことが可能である。
スノーモービルは鈍足なイメージがあるが、
1000ccクラスであれば最高速度は200km/hに達し、まさに雪上のバイクといえる。
小型のものであれば250ccで最高速度は50km/hくらいであるが、
それでも歩くのと比べればまさに雲泥の差である。
もちろん、歩きと違い、急勾配を上下することができないし、
狭い樹林帯を通過することができない。
なので、例えば八ヶ岳の頂上にモービルで行くことはできない。
でも、雪上の手軽な移動手段として、
たとえば50ccくらいの、原付みたいなイメージの、
小型小出力のモービルがあればいいなぁと思う。
最高速度10km/hでも出れば十分だ。歩きより速い。
山小屋への物資運搬やスキー場での管理などに活躍しそうである。
あとは豪雪地帯での公道での移動手段か。
公道走行は不可のものが多い。
あえて車両として登録するとすれば軽自動車扱いとなり普通免許で運転ができる。
(もちろんウインカー、バックミラー、尾灯等の保安装置なども必要。)
今の免許でこんなの運転できるのか!?と思うが、
よく考えれば、僕の免許でも車両総重量8トンまでの車両を運転できるのだ。
スノーモービルくらい、楽勝である。(本当かよ)
実際には雪原上を運行するのには免許は不要ではあるが、
通常は座学+レクチャーで数時間の講習を受ければ可能のようである。
もちろん、エンジンで動く乗り物であるので、普通免許を持っていないと厳しい。

山頂部に入ると大雪原の中の道路となる。(写真は停車時に撮影)
山頂部には3件のホテルがある。
| 山本小屋ふる里館 ドライブイン併設のホテル。\10,000〜。 個室対応、風呂有。 車で行くことができる。 |
| 美ヶ原高原ホテル山本小屋 小屋とあるが、実際には限りなくホテルに近いホテル。 個室対応、風呂有。 車で行くことができる。 \9,000〜。 |
| 王ヶ頭ホテル 最高峰の王ヶ頭にある高級ホテル。 安い部屋もあり\14,000〜36,000。 今回は安い部屋は埋まっていた。 車ではいけず、山麓に駐車して送迎となる。 |
今回は美ヶ原高原ホテルに宿泊した。
夏であれば普通のホテルといったところであるが、
厳冬期ではあらゆるものが凍結し、
風呂などを維持管理するのは大変であろう。
水道も蛇口をひねれば出てくるどころか、温水も出てくる。
王ヶ頭ホテルなんか、全館暖房でかなりふんだんに熱エネルギーを使っている。
温水が出てくるくらいで驚くなよ、と思うが、山小屋であれば通常は水さえ使えない。
雪を溶かすのが大変だからである。
例えば、水の融解熱は334J/g(80cal/g)なので、
つまり氷を溶かすのと、10℃の水を90℃の熱湯にするのでは、
同じ熱エネルギーが必要なわけだ。
王ヶ頭ホテルみたいに大きな風呂を用意したり、
蛇口をひねるだけで温水が出てくるようにするには結構大変なんである。
マイナス10℃の氷を50℃のお湯にするには、
氷の比熱2.0J/g・K × 10 + 融解熱334J/g + 水の比熱4.2J/g・K × 50
であるから、564J/gが必要で、
毎秒1kgの温水を用意するには564kWのエネルギー源が必要だ。
300kWくらいのディーゼル発電機であれば
そのくらいの発生熱量になるので問題ないだろう。
http://www.yanmar.co.jp/prod/energy/generator/diesel-6ny.html
ヤンマーのサイトを見ると、
300kWのディーゼル発電機だと6トンくらいの巨大なシステムになってしまう。
本当に発電小屋が必要なくらいである。
燃料消費量は86L/hであるから、毎時2万円くらいの運転コストか。

頂上台地上は大雪原となっている。
とりあえずチェックインをして、
まだ15時前なのでもったいないので頂上まで往復してくる。
ガスっていて視界がないが、明日は吹雪かないとも限らない。
こんな感じである。
もっと積雪がある2〜3月だと柵が埋まっており、
ホワイトアウトすると大変危険なことになるらしいが、
今回は柵はしっかりと出ており迷う心配は全くない。

最高峰。

日没も近いのでホテルに引き上げる。
目が慣れているので暗くなった気がしないが、
シャッター速度がいつのまにか2段くらい遅くなっていた。

駐機(車じゃないから駐車じゃないよね)してあったモービルのメーターパネル。
目盛りが160kmhまである。本当に出るのか!?

ホテルの中はこんな感じ。

その2

乾燥室。
宿泊者数は30人だった。
モービラー5割、スキーヤー1割、登山者4割といったところか。

ホテルのフロント。

外に出るとマイナス8℃。妥当なところだ。

夕食。
旅館仕様である。
意外と量が多く、腹一杯になった。
馬肉の刺身があったが、焼いたらこれが結構うまかった。
魚がある以外は、基本的に山の幸の料理。

部屋はこんな感じ。
普通の旅館といったところであるが、
これが厳冬期の1900mでこのクオリティなのだからすばらしい。
TVはちょっとアンテナの調子がよろしくない。

風呂はこんな感じ。
展望風呂と銘打っているが冬は窓が凍結して展望は得られない。
夏は結構良い感じであろうな。

翌朝。
いい感じに晴れている。
多少高曇りしているが問題ない範囲。

朝食。
同じく旅館仕様。
ちなみにスクランブルエッグを作っているところ。

なかなか絵になる駐車場である。
北海道を望む竜飛岬も、標高2100mを超える渋峠も、大雪原の美ヶ原も、
あなたの家の前の道路とつながっているのだ。
なんだよそりゃ当然だろと思うが、だからこそいつも使ってる車でここまで来れる訳である。

何故か猫がいる。
山小屋の大敵であるねずみの駆除に役立ちそう。
写真を見て気付いたがシャム猫のオスだな。
黒猫は写真を撮るときには、中央重点測光でそのまま撮ると真っ黒になるので、
1〜2段くらいのプラス露出が必要である。

昨日はそのまま雪原を歩くのに大変苦労したので、
スノーシューを借りることにした。
半日で1000円。ストックも含む。
TSLのそれなりの登坂力があるモデルである。
適応体重は40〜90kgだったような気がする。
もっと小さいモデルのほうが普通の山ではとりまわしが良さそう。
スキーっぽいが、スキーと違い滑降能力は持たない。
ラッセル能力はスキーのほうが上だが、
狭い場所での取り回しはスノーシューが上回る。

大雪原を自由に歩けるのはなかなか面白い。
風が冷たく、かなり冷える。
目だし帽とサングラスがないときついと思われる。

美しの塔
美ヶ原のシンボルといえる塔である。
鐘があり内部は避難小屋も兼用とのこと。
昔は大平原で迷ったらやばいだろうしな。
でも扉がないので本当に雨宿りくらいにしか使えない。

日差しは超強烈。

大雪原。

最高峰の王ヶ頭はアンテナが林立しており秘密基地のようだ。
これはこれで幻滅という人もいれば、萌えるという人もいて評価は分かれる。
長野県の中央部に位置するということで、各放送局がアンテナを建てているが、
うまくやって1塔に纏められないものか。
(と思ったらデジタル化を機にまとめる話が持ち上がっているそうだ)
それにしても、kWクラスの電波をバンバン放射してて健康への影響が心配である。

頂上にある三角点。
雪に埋没して発見不可能と思われたが大丈夫だった。

王ヶ頭ホテルの内部は非常にあたたかく、豊富な補給を予感させる。
というか豪華なので貧乏人の僕は正面から入るのをためらう。

隣接山域の霧ヶ峰。
冬季閉鎖のビーナスラインを通っていくことができる(モービルで)。
同じように頂上部には樹林がなく、こちらも冬には色々楽しめそうな感じがする。

昨日とはだいぶ眺めが違う。
背後は北アルプス。

大雪原を戻る。

美しの塔と王ヶ頭

大雪原2

ホテルに戻る。
スノーモービルが駆け抜けていったが、
春季であればモービルのレンタルもやっているようだ。
もちろん講習を受けているのが前提であろう。

帰りも圧雪道路を慎重に下っていく。
FF車でフロントヘビーなので常用ブレーキを掛けた瞬間に横滑りする可能性がある。
20kmhくらいを上限にしてゆっくり下っていく。
暫くいって雪が少なくなったところでチェーンを外す。

渋滞に巻き込まれることなく埼玉まで帰還できたが、
友人はその後、首都高で2kmを3時間という酷い事故渋滞に巻き込まれた。
以降、無事に帰還。
結論としては、美ヶ原は夏は観光地といった感じで
全く行く気にはならないものであるが、冬は山としてかなり楽しめるのでお勧め。
本沢温泉も、夏は混雑するであろうが、
冬は人も少なく、雪山初心者コースということもあり非常にお勧め。
ここに限らず、こういう難易度が低いところは冬に行くとかなり楽しめる。
参考資料

航空機から見た本沢温泉(がある辺り)。
6月なので殆ど雪は残っていない。

航空機から見た美ヶ原。
樹林に覆われる山のなかで、ここだけが頂上が平坦で、かつ木がない。
これは上空から見ると非常に目立つ。
6月なので当然雪は全くない。
拡大写真。長野県ポスター風。
美ヶ原高原美術館の駐車場が非常に巨大。
遊歩道や塔があるのがはっきりとわかる。
普通に大平原のようだ。