旅行記




2009/01 夏沢鉱泉


夏沢鉱泉とは、長野県八ヶ岳中腹標高2060mに位置する温泉で、
登山道を行くしかない、登山者のみが行ける秘湯である。



とりあえず以下を読み進める時は、これを頭の中に入れておくと理解しやすい。




中央道は既に雪国の雰囲気。




茅野駅は真っ白になっていた。

ここからは、夏沢鉱泉の送迎で宿まで行くことにした。
自家用車でも入れるには入れるが、宿の手前5kmくらいから歩きになるようだ。
送迎なら直で宿まで入れ、時間と体力の節約になる。
節約した分で、上まで行ってみたい。



送迎の車にはこんな面白いものもついていた。
左から、高度計・水平儀・方位儀



で、夏沢鉱泉に到着。
写真は夜にHDR撮影したもの。




まだ12時なので、とりあえず行ける所までいってみよう。
意外にも20cmほどのラッセルになり、標準コースタイムの2倍ほど掛かりながら進む。




深いラッセルをがんばりつつ、
オーレン小屋まで到着、夏だと40分のはずが1時間20分掛かった。

ここから夏沢峠まではあと20分のはず、もう少し行って見よう。


夏沢峠までもう少しだ。




ここには2軒の山小屋があるが、いずれも冬季閉鎖していた。
これ以上先にはトレースは全くなく、膝以上の深いラッセルになりそうだったのでここにて撤退。



一応記念撮影もしておく。
晴れれば抜群の展望のはずなのだが。



宿に戻ると既に3時を回っていたので、
これから夕食の準備にかかる。
スペースが無いため野外での作業になり、あまりの寒さにメゲそうになった。

マイナス12℃の環境だと、
2Lのコーラがだんだんと凍り付いてくるわ、
アルコールが入って凍りづらい缶チューハイがシャーベットになってくるわ、
空の鍋は火を止めると30秒で凍り付いてくるわで大変だった。




とはいえ、苦労はしたが満腹になったのでよしとしよう。




宿の中は暖房がふんだんにあり非常にあたたかい。



ロビーはこんな感じ。



夜は皆すっかり寝静まっていた。




翌朝は7時起床。
4人で6畳の部屋だっため非常に快適。
個室+温泉となれば、もはや山小屋ではなく民宿と考えてよいだろう。




気温はマイナス15℃であった。




薄い雲が掛かっているが、昨日よりはかなり天気が良いので、
夏沢峠を越えて更に先まで行ってみたい。



このカメラ(CANON EOS50D)の11倍ズームレンズは35mm換算で320mmと、かなりの望遠になる。
高空を巡航している飛行機を撮影するとこんな感じだ。
目で見ると米粒にしか見えない飛行機が、機種までわかりそうだ。



雲がうっすらと掛かっており、太陽が見えるがはっきりしない。
手前の風車は、夏沢峠の風力発電機。
回転しっぱなしになっているものもあり、ブオーーンという低い音を出している。

ネットの登山記録を読むと、
「「うおーーん」という雄叫びが聞こえてきて怖かった」という記録が2件あるが、
おそらくこの風車の音だと思われる。



夏沢峠でその先への準備を整える。
正面に見える山が硫黄岳。
行ける所までいってみたい。



森林限界まで登るといっきに視界が開ける。
ここまでで積雪100cm程度、斜度があり6本爪アイゼンでは滑ってしまい登りにくい。



森林限界を越えたとたん、猛烈な強風にさらされる。
風速は35m/s程度とのこと。
ただし平地の3/4の気圧のために空気抵抗もそれだけ減る。


立っていることは充分に可能だがかなり煽られる。
煽られた際にアイゼンを雪面に食い込ませて踏ん張るが、
6本爪では踏ん張りがきかない。
後ろを見ると1人かなり遅れている。

「もうだめそうだ」
「パーティを2分するか」
「そうだな。機長は撮影係を連れて夏沢峠まで降下してくれ」
「そっちは?」
「いけるところまでは行ってみる」
「無理はするな」
「わかってる」
「集合時刻は?」
「往復1時間もかからんだろう、いまは何時だ?」
「10時だ」
「11時には戻る」
「わかった、13時までに戻らなかった場合は緊急事態と判断する。」
「頼む。他には?」
「生きて帰還せよ」
「了解」

※通常、パーティの分割はしないことが原則である。
 パーティ分割したはいいが合流できずに片方遭難、という事例もある。




ここから先は身軽な2名で上を目指す。
寒いので走って登ることにした。
追い抜いたパーティを全て追い抜き返した。
手先が冷たくなってきた。
顔は既に感覚がなく赤くなっている。
「だめかもわからん」
「撤退するか?」
「もう少しいこう」
小ピークまで来ると、山頂が見えるようになったが、
山頂は推定200m先、しかも雲に包まれている。
「もうだめだ」
「撤退だな」
「撤退!!」




撤退時に撮影した写真。
結構な勾配であり、6本爪ではやや不安。



遠くには諏訪湖が見える。



絶壁のトラバース。



はるか下まで雪がない斜面であることから、
雪崩地帯なのであろう。
雪庇が発達しており、ギリギリまでいくと崩壊するはず。
できるだけ山側を歩かないとだめだ。



夏沢峠まで戻ってきた。



松本だろうか?




白い樹氷と、青い空が美しい。




PLフィルターの青が綺麗すぎる。
しばし綺麗な樹氷を楽しみつつ無事に温泉まで帰還。




ところで今回持っていったピッケルだが、
アイゼンが6本爪でスペック不足ということでほぼ活躍場所は無かった。



ピッケルにはBマークのベーシックタイプと、
Tマークのテクニカルタイプがある。
Bは基本的に杖代わりで、万一の滑落停止に使えればOK、というもので、その代わり軽い。
Tは氷の斜面に打ち込んだり、ザイルを使用する際のアンカーに使ったりするのに充分な強度を持つ。

で、これで小屋の横にあるアイスクライミング練習壁を登れるかチャレンジしたみたところ、
8本爪のアイゼンは縦走用のためか氷壁に刺すには安定性が足りず、
ピッケルは振りかぶって打ち込んでも刺さらない。
アイスクライミングは全く不可能のようだ。
まあ、そんなことをする場面もないだろうが。



温泉に戻ってきて温泉に入り冷え切った体を再加熱して、
しばらく反省会を行ったあと、
雪上車で下界へ戻る。



こんな感じの雪上車。
これならば雪深い林道のバリバリ走れる。
ただしスピードは20km/hが限界である。




帰りは焼肉を満腹まで食べた後、中央道の渋滞を避けて快適に帰還。
総走行距離466km、燃料消費量29.8L。




大半の写真は友人撮影。多謝。
撮影機材 CANON EOS50D 18-200mm




直接旅費(交通費、宿泊費等) 14k
間接旅費(食費等)        5k
装備品減価償却費        5k
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計                  24k




航空機から撮影した、八ヶ岳(右)と諏訪湖(左)