旅行記




2008/10 穂高岳


High Rate Climb to 10,000ft




松本までは長野まで新幹線経由のほうが速い。




夕暮れの長野駅。




松本まではJR東海のWVしなので移動。




宿がどこも満室で、マジで駅寝になるかと思ったが、
15件ほどホテルに電話したところでやっと部屋が見つかる。
これがツインで16,000円のなかなかの中級ホテルで、久々に良いところに泊まった。

ツェルトに包まって寝れば、平地だし松本くらいなら全然寝れると思うが、
さすがに山に登る前に疲れるのはどうかと思う。



朝4時45分発の臨時列車で、新島々へ行き、ここからバスに乗り換えて上高地を目指す。




バスは快適にマイカー規制区間を走る。




朝の上高地は登山者でごったがえしていた。
普通の観光客はこんな朝に起きていない。



河童橋。
ここから梓川の対岸に渡ると急に人が少なくなる。



正面には奥穂高岳が見える。
標高差1700m。
本当に1日で行けるのか?
ちなみに、途中に山小屋や水場は無いため、
補給物資を全部運び上げる必要がある。
今回は若干の食料と、水1.5Lを持って行った。

夏だと10Lくらい必要だな、マジで。




途中にある天然クーラー。
冷風が出ているという話だが、出ていなかった。



樹林帯を歩く。
あまり人には会わないので静かな山歩きが楽しめる。

次の山小屋(穂高岳山荘)まではコースタイム8時間。
7時に出発だと順調に行って15時到着でかなり危険な時間である。
パーティの編成によっては日没までに到達できない可能性がある。



だんだん展望が開けてきた。




いつのまにか上高地がかなり下に見える。

実はこのあたりに山小屋があったのだが、2006年の冬に雪崩で全壊。
表層が空気と混合して高速(200km/h以上)で流れ落ちる種類の雪崩だそうで、
小屋はその高圧により粉砕されたそう。
小屋の屋根は200m離れた場所で見つかったらしい。

それ以来、小屋跡には何もなく、したがって補給基地も無い。



垂直に近い(実際には50度くらい)岩場を這い上がっていく。
「アルプス3大急登」の1つだけあって、さすがに一筋縄とはいかないようだ。



結構な高度感がある。
下りにはちょっと使いたくない。
このルートは去年だけで8件の遭難事故が起きているらしい。



垂直に近い(実際には45度くらい)岩場を這い上がる。




やっと分岐点に到着。
標高差はここまでで1400m。
はっきり言ってかなり疲れた。

普通の登山では1日で1000m登るのが目安とされている。
だから、標高差1400mの富士山は普通は1泊2日だし、
この穂高岳も登りだけで1泊の行程が推奨されている。




だが、まだあと400m近く登る必要がある。




赤線のルートを歩いてきた。
結構な難所である。
初心者のみは不可、という理由がよく分かる。

横は50度くらいの急斜面。風も結構吹いている。もし転んだら?さぁ・・・?




下を見ると、涸沢が見える。色とりどりのテントが設営されている。




高度感いっぱいだが、まだ登りに使っているからマシなほうで、
下りに使う勇気はちょっとない。
帰りは違うルート(初心者向)を通ることにしたい。

すれ違った若夫婦2人組は、
旦那が「こっちに足おいて!」「次はこっち」「そこを掴む!」などと、
嫁に的確な指示を出していた。
良き経験者と行くとだいぶ違いそうだ。


まだまだ上へ。




だいぶ周りの山が低く見えるようになってきた。
奥穂高岳は北アルプス最高峰で、日本では3位である。



もう少し。
ペンキマークに従っていかないとどこに足を置くのかサッパリ分からない。



頂上・・・と思ったら違った




頂上に到着!




まったり休む人多数。






穂高岳山荘が見えてきた。
しかしこの恐怖の60度の岩場を降りなければいけない。

あるとき、「ラクラクラク!!!!」と上のほうから怒声が上がる。
バラバラと拳くらいの石が落ちてくる。
自分のちょっと上で止まったが、なかなかヒヤヒヤした。
このくらいはしょっちゅうあることらしい。
落石を見たらとにかく叫べ。暗黙のルールである。



かなり疲れたが、今回の宿である穂高岳山荘に到着。

奥に見える銀色の箱は水タンク。合計80トン。
その右の茶色の建物は診療所。
この穂高岳山荘は岐阜県山岳警備隊も常駐しており、
穂高岳エリアの前進ベースキャンプとなっている。



山小屋の中はこんな感じ。
まだ12時半なので、人は少ない。



なかなか良い感じ。
早めにチェックインすることにする。


部屋はこんな感じだ。
布団1枚に3人だが、早めにチェックインした人は布団1枚1人の部屋に割り当てられるらしい。
今回は12時半とかなり早くチェックインしたので、布団1枚に1人。
今夜はゆっくり寝れそうだ。

涸沢では1畳4人という噂も聞いていたので、
もしそんな状況なら、ツェルトに包まってロビーとか食堂で寝ようかと思ったが、
どうやら大丈夫そうだ。




小屋は、
風力発電機×3=(3.4kW)
太陽光発電×3(4kW)
ディーゼル発電機×3=(35kW)
によって電力が供給されているが、
実際にはディーゼルを駆動するのは1日のうち平均7時間程度で、
それ以外はほぼ太陽光と風力で十分電力がまかなえるのだそう。


水は3110mの涸沢岳直下を流れる僅かな水を持ってきており、
水は非常に貴重であるとのこと。





小屋泊まりの人はテント泊の人よりザックが小さい。
小屋泊まりで30〜40L、
テントで50〜60Lといったところが標準だろうか。

僕はいつも使っている20Lの秋葉の1000円のリュックだったが、
こんなの使ってる奴は僕だけだった。
そろそろ新しいザックが欲しい。



まったりと休む。
高山病で食欲がない。頭も痛い。



北側には涸沢が見え、なかなか良い景色。




涸沢テント村には、100近いテントが設営されている。
奥穂高岳は通常は2泊3日の行程になり、
2泊とも涸沢に泊まると丁度良い時間配分となる。

1泊目にテントを出したまんま頂上にアタックしてまた涸沢に戻ってくれば良い。
そのような理由のため、昼間でも大量のテントが放置されたままになっている。



しばらく休むと食欲が回復してきたのでラーメンを注文して食べる。850円。
塩分を失った体にはかなりおいしい。



靴は名札に名前を書いて部屋の横の棚までもっていく。
間違えられたら困るからな。

皮製の重登山靴の人が多かったが、
靴に関してはゴアテックスの布製登山靴なので
そんなに周りに比べて劣っているというわけではないと思う。



図書コーナーにはかなり沢山の本が並び、
なかなか飽きない。





県警のヘリだろうか。
周辺をパトロールしていた。
小屋のすぐ近くまで来てサービスしてくれたり、なかなか良かった。

県警のヘリは高高度性能は良くないためか、
いったん降下したら、重そうにぐるぐる旋回しながらゆっくり高度を上げていった。

そしてあっというまに遠くまでいく。
パトロールでは最も効率が良い速度、50KIASくらいだと思うので、
100km/hくらいは出ているだろう。






山荘の直上、20mほど高くなった場所には堅いペリポートがあった。
1年前に東邦航空のヘリが墜落した場所でもある。




ここは峠状になっている部分にあり、かなり複雑に強い風が吹く。
ヘリの操縦は難しそうだ。



高山病が治ってきたので、高度順応のために隣の涸沢岳(3,110m)の頂上までいき、
30分ほどぐだぐだして薄い空気に順応する。

山小屋に泊まる時は、少し高いところまで行って戻ってくれば高山病になりにくい。




ケルンが積んである。
子供は「お墓みたい!」と言っていた。




だんだん日が傾いてきたので戻ることにしよう。
しかし凄い場所に建ってるなこの山荘は。



いつのまにか多くのテントが設営されていた。
風で吹っ飛ばされないように十分にアンカーを打っている。

最近のテントは航空機並みに軽量化に配慮されて設計されており、
アルミは当たり前、スカンジウム製のアンカーなどもあるという。




部屋に戻ると人が増えていた。
1人布団1枚なので、これで部屋の面子は確定したようだ。




それでも荷物を置くと結構狭い。
布団1枚3人はどんな感じなんだ。




いつのまにか廊下にも人や荷物が増えている。




そろそろ夕暮れだ。
正面に見える山は、石川県の白山(2,702m)。

手前の風車は穂高岳山荘のもので、
3機の風車により最大4kWの電力を供給することができる。

航空法上では使用期限を迎えたヘリのテールローターを流用しているようだが、
ヘリのローターは高速回転を前提に設計されており、
低速の風量発電の風車で効率が十分に出るのかは謎。



飛行機が夕日を浴びながら高空を駆け抜ける。




地平線に沈むと一気に赤くなる。
東側を見ると、地球の影が段々高くなっていくのがわかる。

疲れているためか眠くなってきた。
そりゃ1日で累計1800m登れば疲れる。



小屋はそろそろ寝る人も出てくる。




腹が減ったので夕飯。
400円。



満天の星空のもと、夕食を食べる人たち。
星と、明るいテントが、なんとも美しい。




遠くには松本の市街地の光が。




日が完全に暮れると、外も人が少なくなりお休みモードへ。

さて、7時半なので寝ることにしたい。明日の御来光は5時半。
10時間は寝れる計算だ。



みんななんとも重装備だな。これが普通なんだけどな。



朝3時半、出発するパーティが多く、ざわざわした音で目が覚めてしまう。
外に出てみると素晴らしい満天の星空。
都会から離れた、空気が澄んだ3000mの空はかなり美しい。

60秒露光で撮影。
北向きなので地球の自転の影響が少なく、星があまり移動しない。

コンパクトデジカメでここまで撮れるって結構凄い気もする。
最近のデジカメの進歩はすばらしい。


冬の星座。
右端には、スバルが見えている。

15秒露光で撮影。これ以上だと地球の自転で星が移動してしまう。


気温はマイナス1℃。
意外と低くは無いが、強い風のせいで体感温度はかなり低い。
こんなんで着の身着のまま夜を明かしたら、次の日の朝には靖国行きだ。




みんな寝静まっているが、
ヘッドライトを着けて出発するパーティも。
高難易度のジャンダルムを抜けて西穂高ロープウェイまでは8時間。
危険度を考えるとそろそろ出発しなければいけない時間らしい。

常夜灯がついているが、
風力発電により平均400W(定格出力の1割強)の電力の供給があるため、
高性能なバッテリーとあわせて十分な量の常夜灯を稼動できる。
そのため、夜間起きる場合でもヘッドライトは必要ない。



眠くなったので二度寝。起きるともう5時半であった。
睡眠時間10時間、これならばまだまだ今日も戦えそうだ。

高山病の兆候はなし。頭も痛くない。完全に高度順応が完了したようだ。
一度順応してしまえば、1ヶ月くらいは順応が持つようなので、
次の山行がだいぶラクになりそうだ。



早くも奥穂高岳方面へは登る人多数。




朝日を浴びて輝く。




明るくなってきたので僕もそろそろ出発するかな。




今日は雲1つない快晴。素晴らしい天気である。




朝日が眩しい。




奥穂高岳に到着。2度目の登頂である。
奥穂高岳は日本3位の高峰であり、2位の北岳とは3m差である。
この3m差を挽回しようと、頂上のすぐ隣の高台ではケルン積み上げ作戦が展開されており、
背よりも高く積みあがっている。
多分頂上よりも高くなっているが、ケルンは山の標高には算入されないと何度言ったら(ry



槍ヶ岳。
ここから槍ヶ岳までのコースも難易度が高い。
通ってきた人は、「奥穂高岳に登るルートのほうが全然マシ」と言っていた。

その左には日本最後の秘境「雲ノ平」が。
どこまで行っても山である。
日本もなかなか凄いと感動する風景である。




約3200mの上には青い空が広がる。




遥か先まで山が続く。
良い景色。




山荘に戻ってきた。




相変わらずこの垂直の崖は怖い。
何が怖いって、高さではなく、「落石」



ここからは涸沢(2350m)へ下ることにする。
ここはザイテングラートというドイツ語の道路名(?)がついている。



途中に岩場はあるものの、それほど難易度が高いルートではない。
ここを下るならまぁ大丈夫だろう。



遠くに飛行機が。




紅葉が美しい。
なんだか久々に植物を間近で見たな。
上のほうは岩と砂の世界で、紅葉とは全く関係なかったしな。



涸沢ヒュッテに到着。




多くの人が休んでいた。




小屋の中は大部屋になっている。
たしかにこれでは1畳に4人になるのも納得である。
カイコの寝床みたいに2段式にすればかなり混雑はマシになると思うのだが。


北面に位置するだけあって、10月なのに雪が残っている。
3000mと比べれば空の青さはちょっと負けるかな。




まったりと休憩していると、遠くからヘリが飛来。
荷物をぶら下げている。

山小屋の兄ちゃんが「ヘリ来ます!風に注意してください!!」と叫ぶ。



あっというまに頭上に来て、荷物を切り離して飛んでいった。
着陸はせず、ホバリングのみなので、ほんの10秒くらいの出来事である。
激しいダウンウォッシュで周りの砂が舞い上がっている。
油断していると煽られて倒れるくらいの勢いだ。
周りの人が「ヘリを浮かばせるくらいの風を吹かせてるんだからそりゃ凄い風だよね」
とか言っていたが、
ヘリは下に噴射する風で飛んでいるのではない。


それにしても人工物が少ない山の中では、いきなり現れるヘリはまさに怪物。




涸沢からは上高地を目指してまったりと歩く。




紅葉を切り裂いて東邦航空AS315Bが飛ぶ。
高山仕様にチューンされているだけあって、10,000ftの高空でも軽々と上昇していく。
この機種は高高度性能に非常に優れ、
ヘリでの最高高度記録12,000m(40,000ft)を持っている。

独特の高いローター音がなかなかかっこいい。
北アルプスで活躍するこいつは一体どれだけの遭難者を救い、
またその亡骸を家族に届けたことか。




段々木が多くなってきた。
標高的にはもう森林限界以下のはず。



横尾に到着。
ここからは基本的に林道歩きになる。
上高地までは11km。

自転車で走って1時間、というレポートもネットにあったが、
ひらすら歩くしかない。



徳沢。
上高地まであと7km。



明神。
上高地まであと3km。
このへんまでくると、上高地の観光客が多くなってきた。
もう登山エリアではなく、上高地エリアに入ったといってよいだろう。

この明神の梓川をはさんで反対側には穂高神社があるようだが、
今回は時間がないのでパス。



事前の予想通り、上高地からのバスに乗る列は大渋滞していた。
結局1時間半待たされてバスに乗る。
横尾からの11kmの林道歩きといい、
これで「上高地はもうコリゴリ」という登山者が多いのもなんか納得である。



なんとか新島々まで戻ってきた。




ここからは電車に乗って埼玉に戻るだけだ。
足が棒のように疲れた。
帰りのバスでも電車でも熟睡であった。


  標高m 標準:分 実際:分 時間 備考
上高地 1505 0 0 0645 登山口
紀美子平 2940 330 205 1010  
奥穂高岳 3190 430 295 1140 山頂
穂高岳山荘 2980 460 345 1230  
涸沢岳 3110 480 365    
穂高岳山荘 2980 495 380    
          宿泊
穂高岳山荘 2980 495 380 0645  
奥穂高岳 3190 545 425 0730 山頂
穂高岳山荘 2980 575 470 0815  
涸沢ヒュッテ 2300 665 590 1015  
横尾 1620 785 695 1150  
徳沢 1560 855 735 1230  
明神 1530 915 785 1320  
上高地 1505 975 875 1450 下山口

累計コースタイムは16時間15分。
今までの最長の山行は、7月の白馬岳で11時間15分であった。
今回はこれを大幅に上回っており、
かなり頑張ったといってよい。